アルバイト(4)

「はぁッ……ぅン・ッあ、……んあ、ァ、あ、ッ……」
 僕はレジ台に上体を伏せ、殆ど床から足を浮かせていた。
 最初は爪先で立っていたけど、もうその力も入らなくなってきている。僕の尻には店長の掌の代わりに今は唇が這い回り、室温よりも熱い唾液が塗されていた。
 今まで何度も布越しの刺激を受けていた中央の窄まりを、店長は指ではなく舌先で何度も直接突付き、僕はその度に体内をうねって駆けて行く疼きに身を捩じらせた。
「すごくヒクヒクしてるよ、金井くんのお尻」
 尻たぶを片方、指で押し開きながら僕の後門を覗き込んだ店長が、唾液に濡らしたぬかるみを指で示して揶揄う。
 意思に反して収縮していることの自覚はある。それが、何か焦れったいような身悶えする感覚をつれてきていることも。
「はッ……ぅ……てん、ちょ……ッも・僕……っ」
 きゅうっと力を篭めたアナルを店長の指先がなぞると、僕は上体を緊張させて喘いだ。股間を前も後ろも弄られて、レジ台を濡らしてしまっている。最初の内は僕の肉棒を弄ってくれていた店長も次第に結局尻ばかり弄るようになって、尻の穴に口付けるように脣を吸い付かせ、中央の穴に舌を捻じ込もうとされると僕はそれだけでもう弄って貰えていない筈の肉棒から白く濁った先走りを滴らせた。
 くちゅくちゅ、と店長が与える唾液が僕の尻穴の入口で掻き混ぜられるような淫猥な音が響く。僕は床から浮いた片足をレジの下の抽斗の持ち手に引っ掛け、店長がし易いように足を開きながら下肢を突き出した。
 店長の舌がまた、ぬるり、と体内に入ってくる。
「ひぁ、・ッんああ、や、ぁア・ん――ッ……」
 がくがく、と痙攣したように躰が震えるのを他人事のように感じた。下肢が蕩けるような、それでいて射精を堪える直前の硬さのようなものを感じる。僕は、店長から与えられる刺激を欲しがりながらもやっぱりそれから逃げるように腰を左右に揺らめかせた。それを諌めるように、店長が平手で僕の尻を叩く。パンと肉の弾ける音が、暗い店内に響き渡った。
「ふぁ、……っン!」
 強く叩かれたわけでもない尻が小気味の良い音をたてると、僕はそれにすら背筋を震わせてしまった。店長の舌がぐっと奥まで滑り込んでくる。先端は体内でちろちろと小さく蠢き、僕は息をしゃくり上げながら断続的に躰を引き攣らせた。
 躰が破裂しそうだった。もう一回、尻を叩かれたら僕は射精してしまうだろう。レジ台に向かって勢いよく、今まで誰にも吐き出したことのない大量のザーメンを。
「……ン、ふ……む、ン、んンぅ……」
 店長が背後で呻いた。僕の尻の中に捻じ込んだ舌をゆっくりと抜き差しし始め、中に含ませた自身の唾液を味わうように啜った。
「ひぅう……ッん! やぁ、……ッや……! あ、駄目、だめです、てんちょ、……ッあ――僕、ア、や……ァっ!」
 ねっとりとした店長の舌が僕の尻穴の中の襞を擦り上げると、僕は上体を反らして悲鳴染みた声を上げた。全身を濡れた蟲に這い回られているような、気味の悪い――しかし限りなく甘美な感覚に襲われて、身も世もなく足をばたつかせる。あっと声を上げる間もなく、僕は射精した。尻穴を啜る店長のすぐ目の前で半分皮を被ったままの肉棒から何度も、粘っこい精液を吹き上げる。
 店長はその精が立ち昇らせる香りに触発されたように更に激しく舌を抽送し始めた。ぬちゅ、ぬちゃと店長の唾液が糸を引く音が僕の耳を覆う。一度吐精した後の僕の肉棒はそれに誘われてまだビクビクと震えて天を向き、尻を店長の舌に犯されながら僕はその夜、三回もイった。
 店長が僕の尻でイったのかどうか、僕はそれを未だに知らない。