BLUE(1)

 優司が死んで、三ヶ月が経とうとしていた。
 だけどその三ヶ月は俺にとって三年以上の月日のようにも感じられるし、三日にも満たないようだった。
 あの日以来仕事もしていないし、日々の記憶もない。
 俺の記憶は優司が車に跳ねられたという電話を受けた瞬間で止まってしまったまま
 もう、動かない。

 朝、鉛のように重い体を無理矢理起こし、味気のないご飯を口に押し込み
 優司のいない日々の中で俺は何となく生き伸びて行く。
 そして日没が始まるとほっとする。
 床に就いて目を閉じると、何も考えないで済むから。
 優司のことも俺のことも、死のことも生のことも
 俺を気遣う人達のことも。

「あの子少し尋常じゃないわよ」
 母親が眉を潜めて言ってるのは知っている。
 最初の一週間くらいなら俺の受けたショックの大きさを理解出来たらしいけど、三ヶ月を過ぎた今も優司のことを思うと堪らなくなる俺を、彼女は理解出来ないのだそうだ。
 彼女は知らない。三ヶ月前、酔っ払った男の軽トラックに轢き殺されたあの人が俺の、誰よりも大切な人だったことを。彼を失った、その先の人生に意味を見出すことが出来ないでいる俺の気持ちを。