LEWD(19)

「ふざけるな?」
 私が聞き返すと、彼は口を噤んでしまった。
 肩から足を上げる。ようやく解放されたかのように――四肢を縛られながらも――青年は大きく息を吐いた。
「ふざけるな、と言ったのか?」
 尻穴に突き入れた指を根元まで埋める。
「……ッ……ィ……!」
 ぶるっと青年の体が大きく震えた。襞のうねりはまだ私を押し出そうとしている。油のねちゃねちゃという感覚も彼にはまだいやらしく感じられないのだ、可哀想なことに。
「その根性を叩き直してやる、と言った筈だ」
 私は壁際に立て掛かった金属の棒に手を伸ばした。それを見た青年が咄嗟に頭を庇うように首を竦めて蹲る。私にとっては都合の良い格好だ。
 青年の背後に立った私は、靴の爪先で彼の尻を蹴ると下肢を突き上げさせた。膝を縛っている分、犬のような格好は出来ないが、今はまだ良い。
「……?!」
 金属棒に油を塗す。それを、指を抜いた尻穴にあてがった。自分が何をされているのか、ただ金属の冷たさしか認識出来ずに彼がふっと躰の力を抜いて首を伸ばした。私の動向を窺うように振り返る。
「……ァ……! や……ッ・だ……やめ……――……!」
 自分の下肢に突き付けられた異物の鈍い光に、彼の表情が変わる。
「や……ッ、――お願いします、何でもする……ッ本当に、何でもするから――……あんたのチンコしゃぶるよ、ザーメンだってきちんと飲む……だから、やめ……ッお願いだよ、やめてくれよ……」
 やめてくれと哀願する声が次第に泣きじゃくるような声音に変わっていく。本当に泣いているのか、息を継ぐたびに躰が大きく上下した。
「ふざけるなよ」
 私は低く答えた。
 青年のアヌスに金属棒をねじ込んだ。菊座の筋肉が、皮膚が音を立てて数本切れたようだが、構わずに奥まで突き進める。
「――――……ッ! ……ッヒ……ぁ……ァ、あ……っ!」
 腹の奥までずぶずぶと侵入してくる金属に、彼は叫ぶことすら叶わずに大きく開いた唇を戦慄かせる。そこへ私の滾りを向けると、自らの手で扱き上げる。流血した青年の尻穴を見ただけで、私は何度も扱くことなく容易に上り詰めて、苦悶の表情に白濁を迸らせた。
「……ゥ、……ふぅ……っ……う・ッ……ク……」
 泣きじゃくる彼の頬を私の精液が伝って落ちる。それが唇の中へ滴っても、今度は彼は吐き出さなかった。
「どうだ、気持ちが良いか?」
 金属棒を一度大きく引き抜くと、血に濡れた青年の肉襞が捲れ上がる。良いわけがない、という憎まれ口も返せないほどの苦痛のようだ。私は再びゆっくりと棒を挿入した。その時ひくん、と彼の躰がよじれた。
 ……まさか感じ始めているのか?
 眸を瞬かせた私がもう一度棒を引くと、彼のだらしなく開かれた唇から小さな呻き声が零れた。
「気持ちが良いのか? ……加賀見さん」
 棒をもう一度押し込んで、小刻みに抜き差しをしてやる。蕾を裂かれて痛む筈の腰を、今度は確実に揺らめかせた。
「……ッく……ぅ・ン……ッ! ……んン・ふ……っ」
 いけ好かない青年の顔が涙と、私の精液に汚され、その目許を朱に染めている。
 私は一度、彼の銜え込んだ金属棒を引き抜いた。血と油に塗れたそれで、双丘の膨らみを打つ。青年が背を仰け反らせて犬の遠吠えのような声で鳴いた。
「気持ち良いのか、と聞いているんだよ」
 捲れ上がった蕾に再び棒をあてがいながら、彼の耳に唇を寄せるように躰を重ねた。焦らすようにゆっくりと、金属棒を侵入させる。耳朶を甘く咬むと、青年は敏感に背筋を震わせた。
「……全くとんだ変態だな……棒っ切れで無理矢理尻を裂かれて感じ始めるなんてな」
 唾液の音を立てて彼の耳朶の中を舐め上げた。彼に銜えさせた棒から一度手を離すと足に巻き付けたネクタイを解く。彼はもう抵抗しようともしなかった。
「……ッく・ふぅ……っ!」
 片足を解いてやると物欲しそうに腰を捩って突き上げようとする。私が圧し掛かっているのと、片足しか解いてやらない所為でそれは叶わずに、工場の床を無為に蹴った。
「棒っ切れ突っ込まれてそんなにイイか、お坊ちゃん?」
 金属棒を突き上げる度に彼は押し殺した声で仔犬のように鳴いた。前に手を回すと、ペニスも半分ほどながら勃起していた。それを扱いてやる。濡れた音が工内に響いた。
「……ッ・てェ……、冷、てぇ……よ……ッ、梶谷……っさん、ケツん中……つめてェ……」
 泣き出しそうな声で青年が口を開いた。私の顔を振り返ろうともしないが、躰の反応は全く淫らなものになっていた。
「じゃあ今、……熱くしてやるよ」
 青年の尻を犯した棒を引き抜き、床に放る。工場内に響き渡る金属音に、青年は肩を震わせた。彼の手首の拘束を解く。ようやく身体の自由を取り戻した青年は、大きく深呼吸して自分の手首を掴んだ。
 深呼吸が一往復し、再び大きく吸って……ゆっくり吐く。私はその時を見計らって彼のアナルに欲望を突き立てた。
「――……! ……ッぎ……!」
 菊筋が私の肉棒をぎゅうっと締め上げる。私はそれを乱暴に振り払って、穿ち上げるように腰を進めた。
「ァ、……っ……はぁッ・ンく……、……ゥう……っ!」
 首の筋を張り詰めさせて、彼は顎を上げた。メリメリと私の勃起が彼の躰を突き破って行く感触を亀頭にも陰茎にも、はっきりと感じることが出来る。抱きかかえた彼の腰が痙攣するように震えている。萎えてしまったかと前に掌を這わせると、ギンギンに勃ち上がっていた。
「熱いだろう、……どうだ?」
 顔を真っ赤にさせて痛みを堪えている彼に、私の声が届いているのかどうかは判らない。しかし私は囁き掛けながら、一度腰を引いた。間を置かずに再び、今度は根元まで突き刺す。
「ヒぎ……ッ……ィ……あ……ァ……っ! ……ってェ……いて・ェよ……っ!」
 泣きじゃくるような声の青年を、躰を繋げたまま抱き起こして近くの機械に凭れさせた。片足をガムテープで縛られたままの彼は私の躰に突き揺さぶられてはバランスが崩れ、私にしがみ付くしかなかった。
 向かい合って躰を重ねると、彼の苦痛と恍惚の狭間に揺れる顔がすぐ間近に見ることが出来た。眉間に皺を刻み、痛みに顔を歪めて泣き事を言う中にある時ふと快楽に蕩けた表情が覗く。
「そりゃあ、……これだけ裂けてれば痛いだろうな……」
 腰を引くと、それを追うように彼の躰が震える。再び貫いてやると、体内のきめこまかい襞が一斉に凍りつき、すぐにひくひくとざわめき始めた。
「……痛いのが、感じるんだな? どっちが変態なんだ、言ってみなさい」
 私の首に腕を回して金髪を振り乱している彼の勃起はますます天を向いて濡れていた。結合部にまで垂れてくるほど、先走りの分泌が多い。腰を打ち付けると響く肉音、それに混じる淫猥な水音は油のべたべたした響きと彼の肉が裂けて出た血液、私が体内で溢れさせた先走りと彼の先走り、彼が滲ませる腸液で豪勢なものになった。
 淫らな音が大きく響くほど私は昂揚し、行為を認めたくない彼の意味を為さない抵抗も弱まっていった。
「……ィ……っ、あ・――ヒ……ッ、やめ……っ梶た……ァ……っ! も、……もう動くな……ッ」
 体内の締め上げが、ただ恐怖に窄まってしまうだけじゃなく私の突き上げに反応したものに変わって来ていた。折角解いて上げた方の足も殆ど床に付いていない。私に突き上げられるまま、宙を切っている。時折彼のイイ所を直接穿つと爪先をぎゅっと緊張させて震えた。
「動いてるのは君の方だ、……違うか? ほら」
 私が肉棒を刺すと、彼が欲しがるように腰をくねらせる。淫らに尻穴を突き出して、私に掻き乱して欲しいと献上しているようだ。
「ほら、……ほらっ男のチンポを咥えて喜んでいる、君が動いてるんだよ」
 じゅぷっじゅぷっと私は彼の尻穴から溢れ出る汁を泡立たせて揶揄した。硬く尖った乳首を爪で押し潰す。彼は背筋を仰け反らせてヒィっと叫んだ。しかしきちんと背後をきつくして、私を悦ばせることを忘れない。望み通り急速なピストンで体内を掻き混ぜてやった。
「ァ……! ゥあっ、アっ……ンあァッ、……か・ァ……っ! うご、……動くなァっ、もう、……もう動くな……って……ェ……っ! ゥ・あ……っ……アっ・あァぁあああ!」
 獣のような雄叫びが彼の唇から溢れた。電気ショックでも与えられたように、今までで一番激しい痙攣が彼の躰を劈く。辺りに独特な、むっとした香りが振り撒かれる。彼は私に深深と貫かれたまま、背後からの刺激だけで達したのだ。