LEWD(24)

「甘ったれる、な……っ、まだ尻穴も突いてやってないのにイくんじゃないよ」
 掠れた声で告げながら、加賀見の耳朶を咬んだ。ヒッと短い悲鳴を上げたかと思うと、射精したのかと思うほど小刻みな痙攣を起こす。口端からは恥ずかしげもなく愉悦の涎を垂れ流して、それを啜り上げている暇もないようだ。
「ほら、もっと足をぴったりと閉じろ、私を悦ばせるのがお前の仕事だろう」
 反り返った私の肉棒は股下を潜って、カリ首を加賀見の蕾に引っかけているようだ。腰を引く度に加賀見が狂ったように悶える。完全に、チンポ狂いの男の表情だ。


「お先に失礼しまーす」
 白髪の目立つ工員達が油に汚れた顔に笑顔を浮かべて帰っていく。彼らの「若社長」がそれに応えないのはいつものことだから、もう慣れたことなのだろう。
 薄暗い工場から社長が作業着姿で姿を現した。加賀見青年はそれにも顔を上げずに俯いている。
「何だ、柊。愛想のない」
 叱る父親の言葉にしてはちょっと弱い響きがあって、父親として彼が、加賀見青年を持て余しているのが手に取るように判る。甘やかして育てて来たのだろう、加賀見青年が暴れることがあるのも、抑え付ける力がなかった所為だ。派手な格好をしてみせるのは、父親の愛情を求めているのかも知れない。
「梶谷さん、今日も残業ですか?」
 返事のない息子に不審がるでもなく社長は私を振り向いた。慣れない伝票の整理が残っていて、と肩を竦めてみせると、彼は豪快に笑った。
「そんなの明日で良いじゃないですか、梶谷さんは真面目すぎるんでしょう」
 言われ慣れた言葉だ。私自身、自分が真面目だと思ったことはなかったが真面目に振る舞っていた方が楽だとは思っていた。一般的に「真面目」といわれがちな生活スタイルが性に合っていた、と言うべきか。ただ今となってはそれも表向きだけになってしまった。男の尻に欲情する私が真面目だとは到底思えない。
「どうです、うちの工場には慣れましたか?」
 社長が田上さんの席に腰を下ろそうとした。加賀見青年が顔を上げて父親を睨み付ける。
「あー……、そうです、一杯やっていきませんか……二階で」
 まだホテル住まいなんでしょう、偶にはうちの食事でも、と続けようとした社長の言葉を成年の一喝が遮る。
「うるせぇよ、消えろ」
 低いながらもよく響く声で言って、青年は机の脚を蹴り飛ばした。びくり、と社長の肩が揺れる。田上さんと同じ反応のようだが、恐らく微妙には違うのだろう。社長は彼を怒らせたくないのだ。跡継ぎをなくしたくないのだろうし、彼にとって居心地の良い職場を作ってやりたいのだろう。儲かった工場じゃない。息子に残せるのは金じゃなくて仕事だけなのだろうから。
「社長、私は構いませんから」
 伝票も残ってますし、と私はもう一度伝票の束を掲げて見せた。若社長はと言うと再び俯いて、苛立たしげに机を爪で弾いている。その様子を気遣わしげに眺めてから、社長は私に申し訳なさそうに何度も頭を下げて二階に上がっていった。
 再び静かになった事務所で私が伝票を繰る。普段は田上さんの仕事だから、確かに慣れていない仕事ではある。
「梶谷さん」
 一方で何の仕事もしていない青年が回転椅子を軋ませながら立ち上がった。
「……っ、頼む……から、もう……」
 その下肢には下着もパンツもなく、根元を縛られた肉棒だけが隆々と勃起していた。