PRESENT(3)

 下着の上からでも、純の屹立は俺が挿入を欲しがってることが判るだろう。俺は純に従順ではないけれど、俺の躰は純にチンポに従順すぎるくらい従順だ。この躰さえなかったら純のような恋人にやきもきする必要もなかったし、こんなに離れがたい思いをしないで済んだのに、と自分の肉体を恨んだこともある。
「これで触って欲しいの?」
 肉厚の舌を俺の唇から引き抜いて純はしつこく尋ねた。純がこれを言わせたがるのは別に珍しいことじゃない。いつもは憎まれ口しか叩かない俺に恥ずかしいことを言わせるのが楽しいんだろう。いっつもそんなんだから普段憎まれ口の量が倍になるんだぜと言ってやりたいところだが、今はそれどころじゃない。寧ろそんなことはどうでも良いから、早く、早く純に掻き回されたい。その気持ちがはやって、脳味噌が淫蕩そのものに覆い尽くされている気分だ。
 ヒクつく菊座を純に知らせたくて尻を突き出し、霰もなく腰を振りたい。でもほんの僅か残った理性がそんな浅ましい行為を恥ずかしがっている。純に媚びたいんじゃなくて、愛されたい。服従したいんじゃなくて、求め合いたい。
 突き出したい尻を窄めると、下着の後ろの部分を先走りで濡らす純の肉棒が追ってきた。
「ふ・っゥ……、うゥン、っ! 純、あつし……っ!」
 俺は上体を純に預けて、自分の腕を両方、後ろに回した。
 片手で下着を横に掻き分けて尻穴を晒し、片手で純の濡れたチンポを掴んだ。自分の欲しいままにそれを穴にあてがって、堪らずにとうとう尻を振ってしまった。
「雅、ほら……ちゃんとしてあげるから」
 気を急く俺を宥めるように純は言うけど、俺を急かしているのも焦らしているのも純自身だ。
 俺は腹立たしくて、でも今更怒って純に背を向けるわけにもいかなくて、目頭から涙が滲んだ。
 してあげる、という純の言い方に純の他意はないんだと思うけど、まるで俺だけが欲しがっているみたいだ。純は与える側で、俺がただ求める側で、俺が求めるから純が仕方なく与えているに過ぎない、というように聞こえる。
 涙が出た、と自覚するとそんな自分が恥ずかしいという気持ちも手伝って後から後から涙の粒が溢れてきた。
「コレでもっと奥までぐちゅぐちゅして良い?」
 涙で目尻をしとどに濡らした俺の顔を覗き込んで、純は言い方を変えた。俺が何を思って泣いているのか純には全て計算済みなのだ。そう思うと悔しさでまた涙が溢れてきた。
 何処までも俺は純の掌の上で、そこから決して出ることが出来ないんだと。たとえ純がその掌を逆さにして振っても、俺がしがみついて離れることはしない。純も俺がしがみつくことを知ってる。だからせめて、憎まれ口を叩くくらい良いのだ。
「もう……いちいち訊くなッて……!」
 純の先端から溢れる先走りが潤滑油となって、俺の蕾への侵入を緩くしている。既に尖りは小さい幅で出入りを繰り返していた。
 もっと奥まで欲しい。全身が総毛立って、何も考えられなくなってくる。カリ下のくびれを尻穴の淵に引っ掛けられる度に俺は短く啼いた。もう意地悪しないで欲しい。言葉は要らないから、めちゃくちゃにして欲しい。
「だって訊かないとすぐ『嫌』って言われるからなぁ」
 雅はすぐ泣くし、と純は嘯く。泣かせているのは何処の何奴だ、と俺が言い返せないことを判っていて。
 下肢では相変わらず亀頭が俺の体内にめり込んではすぐに滑り出ていってしまう。純が下から突き上げてくれないと、上手くハメられない。俺が騎乗位が下手なのは純も知っている。こんなに欲しいのに、こんなに頑張ってるつもりでも純の肉棒を飲み込めない自分にまた涙が零れた。
「言わないから……っ!」
 殆ど駄々を捏ねる子供のような口調で俺は喚いて、純の上で体を揺さぶった。足の先から頭の天辺まで、純に貫かれたくて沸騰しそうだ。
「そう?」
 純は満足そうに笑った。その表情が俺の目には嬉しそうに映って、純が俺の哀願で気を良くしてくれるなら、俺も嬉しいと思えた。