好きの約束(2)

「わぁ、本当だ」
 先刻抜け出たばかりのベッドの上に戻り、天蓋から垂れ下がったカーテンを閉め切ってしまうと、私はリオに急かされるようにして寝間着の下を脱いだ。いつか自分が劣情に任せてリオの着衣を剥ぎ取ってしまうことはあるかも知れないと恐れていたが、まさか私がリオに早く脱げとせっつかれるとは思っていなかった。
 情けない気持ちで下肢を晒した私は高く積んだ枕に上体を凭れさせ、大きく開いた両足の間で愉快そうに私の勃起を観察しているリオを苦笑しながら見詰めた。
「本当にぼくよりも十倍だ。すごい、ご主人様」
 口付けの名残で顎先を濡らしたままのリオは、興奮――艶かしい興奮ではなく、好奇という意味での興奮なのが悲しいところだが――しきった顔で、私の表情とそそり立った肉棒を交互に見た。
「えっと、ぼくのはご主人様のよりもぜんぜん小さいけど……」
 成人男性としては一般的で、別段褒められたものでもない私のものを目測していたかと思うと、リオは覚束ない足取りで羽毛の詰め込まれたベッドに立ち上がった。ふわついた足元を確かめながら、もたもたと自分の着けた膝下丈のパンツを脱ぎ始める。
 最初はメイドが選んで買い与えていたリオの服も、今は私が見立てている。今日の洋服も、リオの明るさによく似合う濃いベージュのパンツだった。
「……ぜんぜん大きくないけど、でもちゃんとご主人様のこと、好きだよ」
 そのパンツを呆気なく足首まで落として、リオはしゅんと肩を落とした。まだ先端までを包皮で覆われた小さな肉棒は私の掌で覆い隠してしまえそうな大きさだった。
「何かぜんぜん、形も違うけど……」
 リオの透けるような白い肌に、体毛の一本もない滑らかな股間、その上にちょこんと取り付けられた性器は普通だったら到底欲情に値しないような可愛らしいものでしかない。しかし私はそれに魅せられるように視線を引き寄せられたままになってしまった。
 言葉のない私に、リオが不安そうに膝を寄せる。
「……やっぱりぼく、変なの? ご主人様のとぜんぜん違う……」
 しまいには、小さな手で隠してしまいそうになるリオに、私はようやく我に返ってリオを手招いた。
「少しもおかしくないよ。私もリオくらいの歳の時はそれくらいだった。大きくなると、私みたいになるんだ。リオは去年より三センチも背が大きくなっただろう?それと同じで、おちんちんも今より少し、大きくなるよ」
 下肢を伸ばした私の躰の上に再び跨って座るようにして、リオは私の手招きに応じた。無防備に開かれた足の間に私が手を伸ばしても、リオは私の顔を見詰めて真剣な顔をしている。
「それって、大きくなったらもっとご主人様が好きになるってこと?」
「……だと良いけどな」
 思わず首を竦め、私は小さく笑った。露にされたリオの腿の上に手を置くと私よりも高い、リオの体温が流れ込んできた。こうしてリオの肌に触れることが久し振りに感じられた。肉親の情を示すように、甘やかして抱きしめることや額や頬にキスをすることはあっても、こうして普段隠された素肌に触れるのはリオがうんと幼い時以来だ。まして、私の中でリオに対する劣情の欠片を自覚してからは敢えて避けてもいた。
「違うの?」
 私がゆっくりと腿の上を撫で上げても、リオは逃げようとはしなかった。私の言葉を訝しげに聞き返し、首を傾ぐ。
「リオがずっと私のことを好きだとは限らないよ。もしかしたら他の人を好きになることもあるかも知れないし、」
「ご主人様も他の人を好きになる?」
 私の言葉を遮るようにして、リオが声を張り上げた。再び縋り付くようにして、私の胸元を握り締める。その拳は震え、大きな瞳には不安感や、恐怖心で覆い尽くされたように悲痛な色を帯びた。
「――……ならないよ。私はもう一生、ずっとリオのことが好きだ」
 リオがそんなに必死にならなくても、たとえこんな風に言葉にすることがなかったとしても、それは変わらない。それは父性のようでもあり、そしてそれ以上に特別な想いとして、私はもうリオ以外の人間を愛さないだろう。
 私が、リオを安心させるようにゆっくりと首を振って答えると、リオの握り拳は少し力を緩めた。
「じゃあ、ぼくだってならないよ。……ずっと、ずーっと、ご主人様が好き」
 リオが首を伸ばし、ぎこちなく尖らせた唇で私の口を吸う。私は唇を開いてその拙いキスを受け止めてから、再びリオの唇を丁寧に食む。ちゅ、ちゅぷ、と唾液の音を立てさせながら唇の表面だけを舐めているとリオは次第に熱い吐息を漏らして唇を開いた。その中から小さな舌を伸ばし、私を誘う。
 唇の外で舌を絡ませると、リオは小さく鼻を鳴らした。舌の裏側を舐め上げられると、背筋が震えてしまうようだ。――まだそれを「感じている」、とは自覚していないだろうが。
 私は腿を撫で上げた掌でリオの股間に指先を忍ばせた。まるで陶器で出来た高級な人形に取ってつけでもしたかのようにぶら下がった可愛い性器を、掌に包む。私が触れると、リオは内腿をびくんと緊張させた。
「大丈夫……安心して」
 私はリオの唇の中に直接囁き掛けるように告げ、包皮に覆われた肉棒の先端を指先でくじるようにして愛撫した。先に指先を濡らして置かなかった所為で、リオの大事な性器を傷めてしまうかと危惧したのも束の間、まだ幼いリオのものはすぐに先端を潤ませた。
 「んふ、ぅぅ……ッ・や、ぁ……なに……?」
 ちょうちんのように窄まった口から覗いた敏感な部分を弄ってやると、リオは私の上に座っていた腰をがくがくと痙攣したように戦慄かせて喘いだ。頬は一瞬の内に赤く染まり、私の唾液をたっぷりと含んだ舌を唇の淵からはみ出させたまま、不安そうに私を見詰める。
「ほら。リオのも少し、大きくなった」
 肉棒を包んだ掌を開き、リオに私が大きくしたリオ自身のものを見せた。しどけない性器は、勃起という言葉にはまだ不釣合いかもしれないが汗ばむほどには露を帯び、天を向いていた。
「ぁ……、……ぼくまたご主人様のこと、好きになった?」
 見た目はさほど変わってはいないが、佇まいが私のものと似てきたので安心したのだろう。リオは半ば恍惚とした表情で笑うと、私の首筋に頬を摺り寄せてきた。胸を掴んだ手をまた私の首に回し、両足で私の腰を挟み込む。
「好きになった?」
 その答えはリオしかもっていない。私が鸚鵡返しに尋ねると、リオは吐息混じりに笑って、大きく首を上下させた。
「うん、もっと好きになった。……たくさん、好き。ご主人様、好き……はンっ・ん、……ぁ!」
 密着した躰の間に挟まれてしまった手でリオの肉棒を再び弄り始めるとリオは背を逸らし、甘い声を跳ね上げた。
「ぃ・ア、……あンん……ッふ、ぁッ……やん、ン……ふぁ……」
 ビク、ビクと全身が痙攣するたびに声を途切れさせ、リオは無意識に私の手から逃げようとしているかのように私の躰を上った。背を逸らすからそうなってしまうのかも知れないが、私の目の前にリオの薄い胸を差し出されると、もう一方の手でリオの上の着衣をたくし上げた。獣が甘い餌を貪るように乱暴な仕種で、リオの乳首を探る。鼻先を肉付きの悪い胸の上にさまよわせ、時折その白い肌を強く吸い上げながら、また色濃く立ち上ってくる淫らな体臭を胸いっぱいに吸い込みながら、私はようやく小さな乳首を見つけ出すと口腔に強引に招き入れた。
「ひァ、……ぁぁっ! や、ァ……ッ・なに、や・ぁ――……んぅ……っ!」
 口内に吸い上げた乳首の先端を舌先で突付くと、電流でも流されたかのようにリオは仰け反って、甲高い嬌声を上げた。首に掛かっていた筈の腕を私の頭に回し、抱きかかえるようにしながら身を震わせる。手の中の肉棒はまだ機能を果たしていないかと思ったが、充分、乳首の愛撫に連動して跳ねていた。
「やぁ……ッ・いや、……いやぁ……ご主人様、そこいや……だめなの、ぼく……なんか変……っ、そこ、変になっちゃうから、いやなの」
 そう言いながらも、リオは私の頭を抱いた腕を緩めようとはしない。私はぷるぷると震えている肉棒を少しでも早く剥けるように優しく上下に扱き、包皮で中の幹を撫でながら、口内に含んだツンと尖った乳首を右に左にと舌を素早く往復させて舐った。
「ひぅっ・ン……あ……! あ、ァ……やあぁ……ッ・だめぇっ……おちんちん、熱いのぅ……っぼく、ぼく変になっちゃう……! 許して、ご主人様許してぇ……――ッ!」
 ビクン! とリオの躰が大きく跳ね上がったような気がした。私の頭を一層きつく抱きしめたかと思うと、急にその腕から圧が失せる。絶え間なく戦慄き、強張っていた全身からも力が抜け、ただ私の躰に寄り掛かってきた。
 私の手の中にこそ汁は飛び出ていないが、おそらく幼い躰は一度、頂を達してしまったのだろう。頭上にぐったりと凭れたリオからは、ただ荒い息だけが弾んで聞こえた。
 確かに精液は飛び散らなかったが、それでも私の掌の中は汗ばんだという程度以上に湿っていた。それが今のリオの吐き出せる性的な体液なのだ。そう思うと私は更にリオが愛しくなって、そっと手を握り締めた。にちゃ、と糸を引いた粘っこい湿り気は私にとって充分満足感があった。
「リオ、……大丈夫? 嫌って何度も言ったのに、御免ね」
 口を大きく開いて、熱に浮かされていたかのように呼吸を弾ませているリオの顔を仰ぐ。今更詫びても遅いが、恐る恐るリオの顔を窺うとリオは力なく首を左右に振った。
「ううん、……大丈夫、……です」
 それから脱力して、リオはすとんと再び私の膝の上に尻餅をついた。全身の至る所が高揚のために紅葉を散らしたように赤く染まり、上着を肌蹴た胸の辺りには私が付けてしまった鬱血の痕があった。
「何か、すごく苦しくて……胸のところが、ぎゅーってして、たくさんどきどきして、すごく怖かったけど、ご主人様のことがたくさん好きになっていくのがわかって、嬉しかったから、嫌じゃなかったです」
 嫌って言ってごめんなさい、とリオは自分の口走った言葉を撤回し、頭を下げた。妙に律儀に育ってしまったものだ。私は下げられたリオの髪を撫でると、再びその高潮した頬に唇を寄せようとした。
「……あ!」
 その時、私の膝の上に座り込んだリオが後ろについた手に触れた私の勃起に気付いて、大きな声を上げる。驚いた私がキスを途中で止めると、リオは慌てて背後に下がって、私の足の下まで遠ざかってしまった。
「ご主人様の好きに、いっぱいキスするんだった……!」
 忘れてたー、と色気のない声で騒ぎ立てると、リオは私の股間のものに対して徐に構えた。リオの乱れる姿を見た所為か、その先端は先刻よりも濡れ、先走りを伝い落としそうになっている。それを見ると、リオは股間から上目遣いで私を仰いだ。
「ご主人様、……キスしてもいい?」
 ベッドに這い蹲り、隆々と反り返った男の股間を目の前にして尋ねてくるリオの無邪気な顔は煽情的で、私は声もなく頷くことしか出来なかった。
 ……こんな淫らな子に育てた覚えはない、と父親のような呟きを心中で漏らしながら、実際この行為の意味も知らないリオにこんなことをさせている自分の素直さを恥じて私は上体を枕の上に倒した。
「……好き。」
 改めて呟きながらリオは、ちゅう、と柔らかい唇を剥き出しの亀頭に押し付けた。直接触れてもいないのに先走りを溢れさせるほど過敏になっていた箇所を吸い上げられて、倒れ込んだばかりの私の躰は跳ねるようにまた起き上がってしまった。
「! ご主人様、痛かった? ……ごめんなさい」
 突然跳ね起きた私に驚いたように、リオが目を丸くして唇を離す。その口元に私のはしたない体液がついているのかと思うと、勃起が痛くなるほどそそり立っていくのを感じた。
「大丈夫、……少しも痛くないよ。すごく気持ちが良くて、吃驚したんだ。リオが嫌じゃなかったら、続けて」
 私が表情を取り繕いながら答えると、リオは花を咲かせたようにふわりと笑い、再び私の勃起に舌を伸ばした。キスをすることが、舌を絡めることだと既に学習しているのだろう。私は知らずの内にリオに淫らな勉強をさせてしまったのか。とても落ち込んでいるような場面ではないが、後で自己嫌悪に陥りそうな予感を感じて私は口元を掌で覆った。
「気持ちいい? ……ご主人様、ぼくがおちんちんにキスすると、気持ちいいの?」
 腹を叩くほど見事に反り返った男根を裏側から――器用に裏筋を辿るように舐め上げて、リオは尋ねた。リオが言葉を紡ぐたび、そのマシュマロのような唇や甘い吐息が私の欲望を掠めて堪らない気持ちになる。私は上がりそうになる呻きを噛み殺しながら小さく顎を引いた。
「うん、……リオは、私がリオのおちんちんを弄っている時、気持ち良くなかった?」
 口元を覆った私の掌にはリオの匂いがたっぷりとついていた。それを舐め取りながら、思わず動かしたくなる腰に力を入れて堪える。リオは、首を捻って少しの間、考え込んだ。自分が私の愛撫を受けている最中のことでも思い返したのか、見る間にその頬が赤みを増した。
「うん……気持ちよかった、……かも。……うん……気持ちよかった……。……あれ、気持ちよかったんだ……」
 自分に言い聞かせでもしているようにリオは三回も繰り返す。その仕種に私が苦笑を浮かべると、リオはすぐにその顔色を察して、
「あのね、ご主人様にたくさんしてもらっている時はどきどきして、何だかよくわからなかったの。からだの奥のところがキューンってして、もじもじして、やだ、ってつい言っちゃって、……でも、もっとして欲しいって思って、もう頭の中がぐちゃぐちゃで……」
 私を安心させようと、早口でまくし立てた。リオとは違い、しっかりと叢を茂らせている私の股間に両手を置き、必死になって弁明する。本人にその気は勿論ないのだろうが、…まるで、二度目を誘っているかのように聞こえた。
「……リオ、こっちにお尻を向けてご覧」
 私は口元の手を外すと、起こした上体から腕を伸ばしてリオの躰を手招いた。リオは大きく口を開き、私の傘のように張った亀頭を唇に押し込みながら頷くと、素直に躰の向きを変えた。
 従順なのではない、まだこの行為の意味を知らないだけだ。それでも、「好き」だからこうしているのだということを、リオはきっと理解してくれているだろう。私は目の前に惜しみなく晒されたリオの四つん這いになった下肢を見詰めると、再び突き上がってくる色情にカウパー腺が溢れたのを自覚した。リオが口の中に含んだ亀頭から漏れたその汁は、すぐにリオの咽喉奥に吸い込まれて、躊躇なく嚥下される。リオは喉を鳴らしながら、私の亀頭が触れている口内の粘膜全てを蠕動させてもっとその汁を欲しがっているように吸った。
「――ッ……! リオ、そう……とっても気持ちが良いよ、上手だ」
 私が褒め、目の前の尻を撫でてやるとリオは少し笑ったようだった。くすぐったいのか、褒められたことが嬉しいのかはここから窺い知ることは出来なかった。
 キスの最中、私がリオの舌をちろちろと舐めてあげたのを真似て、リオは口いっぱいに含んだ私の男根に舌を絡ませ始めた。たくさん含むことが良いことだと知っているのか、彼の小さな口の限界まで包み込まれた肉棒にはリオの唾液が伝い、それを零さないようにリオは一生懸命啜り上げもした。その度に私が勃起を震わせ、汁を漏らすものだからリオはすっかり私を悦ばせる術を覚えてしまったようだ。
 負けじと、私もリオの双丘に鼻先を摺り寄せた。
 余分な肉のない、薄い尻は少し骨ばっているようだったがその谷間にある窄まりはさすがに柔らかかった。か弱い秘所を申し訳程度に覆い隠そうとするふくらみを鼻先で掻き分け、やはり貪りつくように恥部を探る。私自身も知らなかったことだが、私がどんなにリオを優しく扱おうと思っていても、やはり劣情が昂ぶると獣じみた行いをしてしまう。気をつけなければいけないことだが、こうしてリオの肢体を目の前にすると、どうしてもがっつく気持ちが勝る。
「……っぷぁ! ……ア、や……ッ!」
 急に尻の穴を探られて、慌ててリオは私の肉棒を吐き出した。いやいやと腰を揺らめかせたが、私はリオが本気で逃げ出そうとするまで、腰を両手でやんわりと押さえ込んだ。
「やぁ……ッ・なんで、そんなところ……っご主人様、……そんなところ、いや……っ!」
 リオ自身だって触れたことのない窄まりに唇を押し付け、唾液を染み込ませるようにねっとりと舌を這わせる。両手の指で双丘を広げながら、同時にその奥の穴をも抉じ開けようとした。少しでも門戸を開いてしまえば、舌を差し入れることが出来る。少しで良い。リオの中に私を埋めたい。
「あ、ン! ……やぁあッ……や、ん……ふぁ、ン・ん――……ッ! へん、やだ、変だよぅ……」
 尻の穴の上でぬるぬると舌を動かされ、リオは小さな尻全体を震わせた。舌を這わせた穴は収縮を繰り返し、時折その中央に私が尖らせた舌を突付かせると細い腰を跳ねさせ、甲高い嬌声が弾けた。
 私の肉棒の横に顔を伏せってしまったリオは、下肢だけを高く突き上げる格好でいやいやと腰を捩じらせた。私は片手を腰から滑らせ、私の唾液で濡らしたばかりの乳首に指を絡ませた。
「ひゃ・あ……ン! そこだめ、ご主人様、そこだめぇっ!」
 尖った乳首を中指と親指で摘み上げ、人差し指で先端を掠めるように撫でる。それだけでリオは反り返った背中を痙攣させて私の腿にしがみついた。
「駄目? ……リオのおっぱいも、いつもより大きくなってるよ?」
 自身の唾液で口の周りを汚した顔を上げると、私は濡れそぼったリオの菊座を指先でくちゅくちゅとくじった。唾液の滑りに指先が少しでも潜るとリオは足の爪先まで戦慄かせて声もなく叫ぶ。その一瞬の後、またふと脱力したように私の躰の上に崩れ落ちてしまった。尻の穴と乳首を責められて、またイってしまったのか。
 うわごとのような呻きを漏らしながら私の股間に縋り付くリオを覗き込もうと、私は上体を立て直した。
「……おっぱいも、ご主人様のこと、好き……だから、大きくなるの?」
 熱にのぼせ上がって乾いてしまった唇で、リオは呟いた。また思い出したように私の肉棒を口にすると、その先走りでまた唇が潤う。
 幼いリオが私の手管で二度も達してしまった痴態を見た後では、とても私の男根も限界のようだった。
「どうだろうね。……違うのかな?」
 すっかり力が入らなくなった様子のリオは、腕を突っ張ることも出来ずにただ私の肉棒の根元に唇を這わせ、舌を絡ませた。叢には私自身の先走りに加えてリオの唾液が滴り、すっかり濡れてしまっている。螺旋状に血脈を浮き上がらせた私の勃起を、それでもリオは丁寧に舐め上げようと舌を伸ばしていた。
「うん、……好き……だから、気持ちよくなっちゃうの……」
 蕩けてうつろになった声で、リオは小さく答える。こんなことをしなくても私はリオを捨てたりしないし、嫌いにもならないよと告げたところで、やっぱりリオはこの行為に疑問を持たないだろう。私はすっかり熱に溶けたリオの躰を抱き上げると、顔が窺えるように躰の向きを変えさせた。
「あ、……ぼく、ご主人様のおちんちん……」
 自分が何か粗相としたのかと不安気な表情で、リオは正気に戻った顔をした。違うんだと答えることよりも先に、私はその愛しい躰を胸の中にかき抱く。
 リオは少しの間、身を強張らせていたものの、やがて私の鼓動の早さに同調しながらその力を抜いた。
「リオ、大好きだよ」
 リオの両腕が私の背中を抱き返す。いつもよりもずっと高くなったリオの体温が、窓の外に上った太陽よりずっと私の身を焦がす。火傷してしまいそうな熱をきつく抱きながら、私はリオの濡れた双丘の谷間に自身の猛りをすり寄せた。
「ご主人様、……っ熱い……」
 同じようにリオもまた、私の熱で焼け爛れてしまえば良い。宛がわれた男根の熱さに逃げ出すでもなく身を捩ったリオの躰を両腕で強く拘束したまま、私は小さなリオの尻の肉に夢中で怒張を擦り付けた。
「は……っあ、ご主人様……ッ・ぁ、ぼく……あ、ア……なんか、何か……変っ――ン、あ……ご主人様のおちんちん、ぬるぬるするよぅ……っ・あ、ぁ……はァ、っふ……んぁ・あ……!」
 唾液で濡らしたリオの深部に、先走りを飛び散らせた私の男根を沿わせて滑らせると、リオはその熱を求めるように尻を下方に突き出し、自らも拙く腰を振った。ぬかるんだ穴を犯し、激しく腰を使っている時と同じ――或いはそれ以上の粘っこい水音をたてながら、私とリオは激しく腰を絡ませて上り詰めていく。
「気持ちいい……ご主人様、っ・気持ちいい……ぼく、気持ちいいよう……ッ! あ、ッは・ぁ……いい、……もっと……もっとして、ご主人様、ぼく、好き……ご主人様、好き……もっと、ア、も、や……ッあ、あ……あァ、あ、ああ――……ッ!」
 リオの小さい躰が私の下腹部に擦り付けられてしまうと、キスをすることも出来ずに私はただ怒張を突き上げることしか出来なかった。
 リオは千切れそうなほど膨らんだ乳首を私の寝間着に擦り付けながら、私の猥褻な熱を貪るように尻を振って悲鳴のような嬌声を上げる。私は自我を失ったようにただ痙攣を繰り返すだけのリオを抱き止めながら、極限まで張り詰めた欲望を穢れない尻穴に突きつけると、とても進入は出来そうにない狭い肉道をめがけ、どっと雄汁を浴びせかけた。
「ふ……っ・ン、ぁ……ご主人、さま、ぁ……いっぱい熱いの、……」
 三度目の絶頂を受けてしまったのだろう、リオは断続的に背筋をビクビク、と震わせながら私の大量の精液を浴びて顔を上げた。その口元にはだらしなく唾液が伝っている。淫靡な表情だ。
 もう何年もリオを見てきたが、こんな表情を見たのは初めてだし――恐らく本人でさえ、こんな表情をしたのは初めてだろう。
 私は昂ぶった性器が萎えてくるにつれ、早速心を覆い始めた自己嫌悪に襲われてそのリオの顔を直視することを躊躇った。
「……ご主人様、……すき」
 力の入らない震えた腕でシーツを引きずり、リオが私の躰を這い上がってくる。私が迸らせた精液はリオの尻にも腿にも、そして私の下腹部まで濡らした。
 リオの、まだ余韻に打ち震えている唇が私の唇に触れる。表面をすり合わせただけの幼いキス。それでもリオは、私の気持ちを翳らせた厚い雲を取り払うように笑った。
「ぼく、……ご主人様のそばにずっと、いられる?」
 初めての行為で三度も高められ、リオは体力を消耗したのだろう。必死に瞼を押し上げているような表情で私の顔を窺いながら、尋ねた。
 胸の上に乗ったリオの背中に腕を回すと、私の放った飛沫はリオの背中まで達していたようで、ぬるりと滑った。
「ぼく、……お皿とか、すぐ割っちゃうし、お手伝いもちゃんとできないから……ぼくが大きくなって、一人で暮らせるようになったら、ぼく、ご主人様と一緒にいられない?」
 リオの睫が頬に落ちた。体力に負けて眠ってしまったのではない。私の答えに怯え、視線を逸らしてしまったのだ。私が驚いて言葉を失っている一瞬の間に、伏せられた睫の下から涙の粒が浮かんできた。
「……っぼく、お父さんもお母さんもいらない、から……ご主人様と、一緒にいたい……っ・ご主人様に、ずっと好きでいて欲しい、から……お手伝い、がんばるから……!」
 一粒涙が溢れると、次から次へとリオの頬は涙の洪水に押し流された。先刻まで熱く火照っていた躰が小刻みに震え、私の腕の中で冷えていく。私は腕の力を強め、リオの頬に唇を重ねた。
「……リオはこの邸のメイドではないよ」
 吸っても舐めても止まりそうにない涙を全部飲み干してやろうとでもするように、私はリオの顔を口先で懸命に拭った。ようやくその唇がリオの目元まで届くと、ようやく二の句が告げる。
「ましてや、リオのお父さんやお母さんになれるとは思ってない。リオは、リオが好きなだけ私の傍にいて良いんだ。……私もリオが大好きで、ずっと一生好きだって言っただろう?」
 涙に濡れたリオの瞼が重くてはいけないから、私は丁寧にリオの瞼の上も唇でなぞった。両目をそうしてやると、リオは恐る恐る大きな瞳を開き、不安そうに私の顔を窺う。
「……じゃあ、また、好きのキスしてくれる?」
 私は、自分の心を重く閉ざしていた自己嫌悪をリオに見抜かれてしまったのかと一瞬どきりとした。それを押し退けるように、大きく頷く。
「勿論」
「……あの、……おっぱいにも、お尻にもしてくれる? ……ぼくが気持ちいいの、いやって言っちゃっても、してくれる?」
 ぎゅうと、リオの手が私の寝間着を強く握った。そんな風にしがみ付きたいのは、先刻まではこっちの方だったというのに。
「リオが本当に嫌だって言うまで、私はいくらだってしてあげたいよ。……だって、私はリオのことを十倍も好きなんだよ」
 当然のことを話すように答えを導き出すと、リオは下唇を噛み、はにかんだ。
 まったく、彼には敵わない。
 どんなに私が胸の内を曇らせていてもそんなことをものともせずに、たちまちの内に私を幸せにしてしまう。まるで、太陽が曇りの空を照らさないことがないのと同じように。