登校日(4)

 三芳の指先が清臣の股間を滑り降りた。裏筋を通り、陰嚢を越える。蟻の門と言われる、その下を渡っている途中で、清臣がまた甘い声で啼いて爪先を緊張させた。先走りが糸をひき、三芳の手を濡らす。
 三芳の指先は、大きく足を開かせた清臣の双丘の谷間を指して、止まった。教室内に生唾を飲む音が鈍く響く。初体験済みだと言っていた生徒達も、食い入るように清臣の肢体を見詰めた。
「遠藤、廣瀬の尻を割って見てみろ。ヒクヒクと震えて、モノ欲しそうにしているはずだ」
 三芳が手を引いて言うと、達哉は齧り付くようにして清臣の下肢を覗きこんだ。達哉の頭に邪魔されてそれを見ることが出来ない生徒達がついに席を離れ、教壇に詰め掛ける。清臣が顔を覆った。
 薄く肉の付いた清臣の双丘を、ぐっと押し開く。そこには産毛が生えていて、その中に皺を寄せて窄まった清臣のアナルがあった。
 思わず達哉が唾を飲み込む。達哉の背中に躰を押し付けるようにして覗きこむクラスメイトの存在など、気にならなかった。三芳が女性器だと言う清臣のアナルに、達哉は夢中で吸いついた。
「ぁ、ッちょ……――達哉、……ぁ……っ駄目」
 双丘を割った手で尻を抱え込むようにした達哉の頭を押さえ、清臣が身を捩る。しかし三芳の腕に拘束された清臣は教壇から降りることも出来ずにただ腰を突き上げるような形で、クラスメイトの目に艶めかしく濡れた肢体を晒した。
「うわ、……廣瀬、エロ……」
 誰かが呟く。どこからともなく手が伸びて、達哉が唾液で汚した清臣の肌を弄った。
「ふぁ、……ッあ、やめ……嫌・触るな……っやだ、やだ、ァ・あ……っンあ、ぁん……ゃあ……っ!」
 一人が触れ、清臣が淫らな声を漏らすと我も我もとみんなが好き放題に清臣の躰を弄んだ。乳首に吸い付く者も、そそり立った肉棒の先端を捏ね回す者もいた。教壇の周囲にそれぞれの荒く弾んだ吐息が充満する。三芳は、時折清臣の頭を上げさせてクラスメイトに陵辱されて恍惚とした清臣の顔を見せつけた。それにまた触発されたものが清臣の肌に貪りつく。誰かに絶えず刺激を与えられた清臣は、達哉の舌が滑り込んだアナルをぴくぴくと収縮させながら我を失って腰を揺らめかせるだけだった。
「遠藤、そろそろコンドームを付けなさい」
 三芳がコンドームの袋を破って達哉に差し出す。清臣の陰毛ごと唾液でべっとりと濡らしていた達哉は顔を上げると、息苦しいほど勃起した股間を寛げさせた。もう今更、服を脱ぐことなど何とも思わなかった。思う筈がない。
「先端の精液貯めを潰して、まずは空気を抜きなさい。それから、男性器に宛がって根元まで被せる。この時爪などで傷をつけないようにあらかじめ指先を清潔にしておくこと」
 三芳の授業振った口調はこの期に及んで揺らがなかった。三芳の手順を聞きながら、達哉はいきり立った肉棒にコンドームを被せた。少し窮屈な気はしたが、仕方のないことなのだろう。ゴムを被せてしまうと、目の前に拡げられた清臣の肉体がどうしようもなく欲しくなった。達哉がコンドームを装着するために一瞬離れていた隙を見て他の生徒の指が、清臣のアナルの中に入り込んでいる。手の先を追うと、宮川だった。女性器を弄るようにして指先で愛撫をしているのだろう、達哉の唾液で濡らされた清臣のケツマンコを宮川の手がちゅくちゅくと捏ねるたびに、清臣の全身が緊張して苦しげな嬌声を上げる。教壇の上に仰向けになり、幾つもの手で全身を弄られた清臣の腹の上には既に性器とも先走りともつかないような汁が溜まるほどになっていた。
「退けよ」
 達哉は宮川の手を払うようにして抜き取ると、周りのクラスメイトを掻き分けた。これ以上清臣を他の奴の手に触れさせたくないと思った。怒りにも似た気持ちだった。
「コンドームは一枚しかないからな、実践は遠藤だけだ。お前たちは少し離れなさい」
 三芳が、達哉の意を汲んだように言った。渋々手を離した生徒も、かと言って席に戻ることも出来ずに達哉と清臣から僅かに離れたに留まった。
 清臣の躰を、教壇から下ろす。ぐったりとした清臣は、達哉の顔を見ると赤く染まった顔を安堵させたように笑ませて凭れかかってきた。
「清臣、……挿れて良い?」
 ぴたりと合わせた清臣の躰に、コンドームをつけた怒張を摺り寄せる。清臣は、小さく頷いた。
 クラスメイトが各々の欲望を持て余しながら食い入るように見詰める中で、達哉は清臣の躰を反転させ、教壇に手をつかせる。三芳も教壇から離れ、脇から様子を見守った。
 唾液と先走りに濡れた双丘を背後から割り、下肢を抱え上げる。教室内は水を打つほど静まり返っていた。
 濡れたアナルに亀頭を宛がい、達哉がゆっくりと腰を沈める。熱い肉棒が清臣の中に埋まる、にちゅ、という音すら聞こえてきそうなほど、その瞬間誰も物音を立てなかった。
「ぁ……っ! ふ・ンぁ……あ……っ――達哉、……ったつや、ぁ……っ」
 焦らないように、静かに達哉は腰を進めた。狭い肉壷の中で複雑に折り重なった襞を硬く尖った亀頭が掻き分けていくのを感じる。進むたびに、清臣は唇を戦慄かせて声もなく喘いだ。
「廣瀬、痛くはないか」
 達哉の代わりに三芳が尋ねる。がっくりと首を折るようにして清臣は頷いた。
「はい……っ・気持ちい……っ達哉のおちんち……ンっ、ぁ・きもちイイ……です……っ」
 三芳に答える清臣の声を聞くと、達哉は自分の昂ぶりがぐんと硬度を増すのを感じた。清臣も内部で感じたのだろう、教壇に付いた手で力なく天板を掻き、男根に挿された下肢を揺らめかせた。
「も、…無理」
 坂本が呟き、飛びつくように清臣の躰に貪りかかった。坂本の抜け駆けを見ると、また全員が清臣の肢体を撫で回し始める。達哉を咥え込んだアナルが、ビクビクビクとそれに反応して震え始めた。
「……っ清……み……っ!」
 それに堪えきれなくなった達哉が、根元まで突き刺すようにして清臣の腹を犯す。すると他の誰が弄るよりも高い声で清臣が啼いた。達哉の中に、下らない征服欲のような、或いは優越感のような気持ちが沸いて夢中で腰を振った。
 ぱんぱんと尻肉に腰を打ち付ける音を響かせながら達哉が激しく抽挿すると、それに合わせて清臣が下肢を揺らめかせる。ケダモノのようになったクラスメイトに全身を弄られながら甘い声で悶える清臣を犯し、達哉は腰つきも乱暴になった。
「ぁ・や……ッもうやだぁ……っさわ、んな……ッだめだめ、ッ……や……達哉ぁ、たつ……イっちゃう、……もうイっちゃうよぉ……っ駄目……イク……っ」
 イク、イク、とあられもない声で叫びながら腰を高く突き上げた清臣は達哉に突き上げられるたびにビュク、ビュクっと大量の精液を勢いよく吹き上げた。感極まった声は甲高く裏返り、気を失うのではないかと心配になるほどだった。
「んは・っア……あ・ァ……ぁあ……っやぁ……駄目、まだイク……イクの……ッもうやだぁ……イクぅ……っ」
 泣きじゃくるような声で嫌だと言いながら、清臣は貪欲に腰を振った。達哉が腰を引くのを許さないように尻を押し付けてきながら最奥を抉らせるように腰を回転させる。
 清臣が言う通り、清臣は大量に汁を吐き出した後も躰をビクビクと痙攣させながら間を置かずに何度もイった。それを見ながら、クラスメイトの殆どの生徒がその淫らな肢体に精液をぶちまけた。達哉に貫かれた清臣の躰が、他の男のザーメンで汚されていく。それを目の当たりにした達哉は清臣の腹を突き破らんばかりに激しく突き上げると、奥歯を食いしばって大きな唸り声を上げながら、そのアナルの中で、果てた。

 帰り道、べたつく肌に纏わりつくワイシャツを気にしながら清臣は無言だった。
 達哉の脳裏には他のクラスメイトに汚された清臣の姿がちらついて、どうしても気が気じゃなかったが、とてもそんなことは言い出せそうにない。恐らくこれから一生、今日のことはなかったことになるのだろう。そう考えると、息が詰まりそうに苦しかった。
「……達哉」
 いつもより長い帰り道を終え、互いの家に程近くなってから、やっと清臣が重い唇を開いた。まだ日は高いのに、達哉の気持ちは夜中よりずっと暗い。
「明日は、部活?」
 いつも通りの会話。このぎこちなさも、明日にはもうなくなっているかも知れない。これまで通りの関係を取り繕うのは容易いだろう。でも、この胸の痛みは一生付き纏うのに違いない。達哉が努めて声に出して頷くと、清臣が足を止めた。家まであと数歩。達哉も足を止めて、清臣を振り返った。
「明後日は?」
「……部活」
 達哉の部活日程表を、清臣も知っている筈だ。訝しく思いながら達哉が太陽の眩しさに顔を顰めながら清臣を見ると、清臣は視線を伏せていた。
「……次部活休みなの、いつ」
 土曜日、と達哉は答えた。地面を見詰めたままの清臣から視線を外す。耐えられないような気持ちになった。
「また、遊んでくれる?」
 清臣は、小さい頃から喧嘩した後に必ず同じように聞いた。また遊んでくれる? 喧嘩したわけじゃないのに、そんなことを言うのはおかしい。達哉は笑ってそう言い返そうとして、うまく笑えずに諦めた。
「当たり前だろ」
 清臣が嫌じゃなければ、達哉に嫌がる理由はない。元通りのように振舞うのは簡単だ。この痛みにもやがて慣れる時が来るだろう。
「……達哉」
 アスファルトに落ちた濃い影を見下ろしながら、清臣が言う。達哉は、視線を上げて清臣を見た。
「今日、一緒にお風呂はいろ」
 清臣はそう言うと、ようやく顔を上げ、ぎこちなく笑って達哉に言った。