満員電車(5)

 男の指がブリーフの裾を摘み上げた。それだけで喉を反らせてイきそうな声を上げてしまう。さっき達したばかりのチンコからはとめどなく汁が零れいた。女がヴァギナを濡らすのに、僕はチンコからしか愛液が漏れてこない。
「尻マンひくつかせて何が恥ずかしいんだよ」
 そう詰ると、男は僕の尻穴に中指をいきなり突き立てた。
「ヒ・っ……――!」
 にゅぶり、と肉を分け入ってきた感触に、僕は電車の扉を弱く掻いて腰を浮かせた。
 男の指は僕の先走りに散々濡れていて、痛みはまだまだ感じなかったけど、その異物感は僕を怯えさせた。それでも男は気遣いなど見せずに指を引き抜き、また挿してくる。
 上壁をなぞり下壁を擦り、襞を捏ね回すように指を曲げて孔を拡げられると、時折意図的に嬲られる前立腺が熱くうねって僕はいつしか蕩けていた。
「ぁふ、……っふぁ・アぁ、ン……もっと、も・ッと……入れて、酷くして下さい……」
 電車がホームに滑り込んだ。背後の遠い扉が開く、まだ僕の降りる駅ではない。新しい人が乗り込んできただろうか。反対側の扉であさましい姿をしている僕のことも知らずに。
「チンポが欲しいんだろ?」
 判ってるよ、と男が囁く、優しい声。僕の片尻に男の熱い下肢が擦り付けられた。期待で体がぶるっと戦慄いた。夢中で尻を振って、それを蕾へと誘おうとする。その様子を男も楽しんでくれているようだった。
 発車とともに電車が大きく揺れた。その瞬間を狙っていたかのように男が僕に入ってくる。
「っ・はゥ……あ、……!」
 背筋を甘い痺れが走った。僕が顔を天井に逸らすとその表情を見ている他の乗客が視界に飛び込んできた。これは僕の妄想じゃなく、本当に、見られながら貫かれているんだ。
「きゅうきゅう締め付けてきやがる……」
 男が唸るような声を出した。僕の腰を両手で掴んで、気合を込めるような声にもならない息を吐きながら突き上げてくる。押し出されるように、矯正が漏れた。
 熱くなった肉が、感電したようにびりびりと痙攣して男の凶器を受け入れていく。犯されている、と表現するのに相応しい力強い突きに、僕は意識が朦朧とした。見開いた目には電車の景色が映るけれど、もう全ての感覚が突き破られた肉壺に集中している。
 腹の奥をずんと突き抜かれれば苦痛にも似た快楽に、発情した猫のような甲高い声で騒がしいくらいに啼き、
 腰を引かれれば捲り上がる襞が男の肉棒に絡み付いて引き止め、もっと荒々しく掘ってくれとあられもなく懇願した。
 満員電車の中ではお互い思うように空間も取れず男が腰を叩き付け、僕がそれに呼応して尻を振り、ただそうやって繋がる事しか出来ないけれど、周囲から感じる嘗め回すような遠慮のない視線と誰のものともつかない熱い息、初めて銜え込んだ肉棒の猛々しさに僕は体を激しく揺さぶってよがった。
 僕が体を痙攣させて尻孔を窄めるたび男は、それを諌めるように肉襞を穿ちながら、濡れた唸り声を唇から漏らす。僕はその声にも欲情を煽られて、電車の床にどぷどぷと惜しみなく汁を振り撒いた。
「お前初物だろう?そんなに良いのか、チンポが」
 男は詰るように言いながら、掴んだ僕の尻たぶをぐいと開いた。根元まで肉棒が突き刺さって、肉のぶつかり合う音が響く。尻の谷間に男の剛毛がちくちくと刺さるのを感じた。
「ぃイ……――!イイ、イイ、、もっと突いて、……ッ・腹ン中ぐちゃぐちゃにして欲しいの、ォ……っ」
 車内にアナウンスが流れた。その音も歪んで聞こえる。肉の間からぐぢゅぐぢゅと汁の泡立つ音が聞こえて、それに掻き消されているのか。きっと僕の周囲にいいる人もそう思っているに違いない。
「……ッオラ、こうか?ずっぽり銜え込んでキャンキャン啼きやがって」
 玉袋を僕のそれにぶつけながら、男の肉棒が僕の腹を穿つ。頭の先まで串刺しにされるような錯覚に陥って眩暈がした。腰がどろどろに溶かされて掻き回されているようだ。
「っひ・ゃア……あぁ、あ――……イク、イっちゃ……っ出るぅッ、また出ちゃうよ……ォああ、ア……!」
 肉棒が僕の中でどくんと跳ねた。マグマを噴き付けられたように熱が広がって、僕の肉を焼く。男が体を痙攣させて僕の中にぶっ掛けたのだ。僕は金切声を上げて身を捩り、男のザーメンを浴びながら二度目の精を大量に吐き出した。
 電車が、幾つめかのホームに滑り込む。
 荒い息を整えようともしないで恍惚とした僕の尻を、男が掌で容赦なく叩いた。どろどろに熟れた肉からは男のペニスはもう抜けていた。
「……ぁ……」
 その意図を僕が察するよりも早く目の前の扉が開く。
 僕は慌ててジッパーを引き上げた。でも、男に破られた背後は開いたままだ……。
 男を振り返ろうとした。
「ハヨー、佐倉ぁ」
 その肩をクラスメイトが叩く。尻の解れを見られないように体ごと振り返っている内に、電車の扉は閉まってしまった。
「ア、……おは・よぅ……」
 まだ体中が敏感になっている。熱を抱えたままだ。
「何お前、爆睡してたろ?」
 涎出てる、とクラスメイトが笑った。口端を拭う。
 まさか、夢ではない。現にあの電車は僕の吐き出した汁の匂いを立ち篭めさせて終点まで走っていくんだから……。