兄姦(5)

 全裸で椅子に腰を下ろし、震える手でノートの上にペンを走らせている。
「早く答えろよ」
 廊下に漏れ聞こえていたのは兄をはやし立てる先輩の声だった。兄の後ろにぴったりと付いた先輩の上履きが、兄の尻を乱暴に突付く。
「あと一分待とう」
 様子を何とも思っていないかのように担任教師は腕時計を見下ろして言った。
「あと一分だってよ、急げよ」
 右隣の先輩が兄に顔を近付けて焦らせるように机を叩く。兄の肩が震えていた。
「違ぇよ、こいつゼンマイ仕掛けだから、ココ捻ってやんねぇと動かなくなっちゃうんだよ」
 左から兄の股間に手が伸びる。後ろからではよく見えないけど、仰け反った兄の反応でその手がどこを捻ったのかは容易に想像できた。
「ほれほれほれほれ」
 囃し立てる声が大きくなっていく。兄の体が悶え、机に突っ伏す。椅子から浮いた尻を上履きが嬲って、俺が見たこともないような兄のアナルを拡げた。
「一分経ったな」
 教師の冷静な声は先輩達のたてる喧騒を掻き消すように凛としていた。
 汚い上履きのつま先で尻穴を弄られた兄が短い悲鳴を上げる。
「答えは出たか?」
 教師が兄のノートを覗き込んだ。その表情が歪んで、俺にはとてもそうは見えなかったけどどうやら笑ったらしかった。
「……途中まで、正解だ」
 あんな風に急かされながら、体を弄ばれながら、兄は数式を解いていたらしい。俺は事態の異常さにも拘らず感心してしまった。
 教師がいつも着ている変わり映えのしないスラックスのパンツに手を掛けた。中に立派に勃起している肉棒を取り出す。
 俺はこれから何が行われるのか、想像はついたけど信じられなかった。信じられなかったけど、待ちきれない思いで目を逸らせずにいた。今、俺の目の前にいる兄の体は俺の兄ではなかった。
「答えられなかったのにくれてやんの?」
「うっわ、センセェこいつに甘くねー?」
 三方から声が飛ぶ、その先輩方の股間にも屹立が見て取れた。
「途中まで正解だから、途中までだ」
 兄は教師の肉棒が天を向いているのを見ると雌犬のように鼻を鳴らして席を立った。その表情がようやく俺の目に映る。
「先生、最後まで答えられず申し訳ありませんでした。先生の貴重なお時間を割いて頂いているのに至らない生徒でごめんなさい。お詫びにご奉仕させて頂きます」
 それは決められた美しい台詞のようだった。兄の好色に染まった表情を見ていれば判る。
 よし、と唇を動かした教師の肉棒を兄は下からゆっくりと丁寧に舐め上げる。床に正座して手を膝に、それは俺の知る兄の礼儀正しいポーズだったけど、今兄は教室に全裸で男達に囲まれ、チンコをびんびんにさせて教師の猛々しく変色した性器を美味そうにしゃぶっていた。
 兄の涎で見る見るテカリを発するペニスに、兄が唇を這わせて先走りを啜る。
「ム・ふぅ……ン……ぁあ……あ、ん……んくゥ……」
 兄の鼻腔から漏れる甘い声で、教室内に篭った熱気が俺にも届いてきそうだった。じわり、と欲情が俺の足元を這い登ってくる。
「咥えろ」
 教師が言うと、待ってましたとばかりに兄がその亀頭を口に含む。頬を細めて内側の粘膜でしきりに扱きながら、顔を前後させている。その柔らかく濡れた感触は当時の俺には想像でしかなかったけど、勃起がパンツを押し上げた。
「もっと気合入れて奥まで突っ込めよ、オラァ」
 傍で見ていた先輩が兄の後頭部を抑えてチンポに押し付けた。兄の眼が見開かれ、げぇっという蛙のような声が漏れる。しかし先輩は容赦なく兄の頭を教師の股間で揺さぶった。咥えられた本人はただその様子を見下ろすだけで、時折感じれば短く呻いた。
「ココ弄ってやりゃ気合も入るでしょ?」
 俺って優しいー、と笑いながらもう一人の先輩が兄の背後から手を回して乳首を摘んだ。兄の正座が崩れて四つん這いになる。チンポを押し込まれた唇からくぐもって聞こえる声は紛れもなく歓喜の戦慄きだ。
 足跡をつけられ、赤くなった尻を振って兄はチンポを貪る。兄が望まずにされていることとは思えなかった。兄はいつも嫌な素振り一つ見せずに居残りに向かうし、帰ってきてからも暗い表情など見せない。
 兄が、男の癖に男に虐げられて感じるような変態だということは明らかだった。
 物欲しそうに振られた尻の奥で勃起した兄のチンポが涎を垂らしてる。乳首を捻られ、チンコを咥えさせられてイきそうなのか。
 案の定それを見つけた先輩が兄を指してげらげら笑った。涎と涙とカウパー液に濡れて汚れた顔を歪めて兄が何かを訴える。しかしペニスを咥えさせた教師がそれを許さず、兄の喉を突き始めた。
「ぐ、ぇ……ッんぐぅ・ン……ぁぐ、ン――……んむ、ンっんー……」
 粘着質な音が兄の唇の淵から漏れる。それを間近で聞いて耐え切れなくなった先輩の一人が制服から肉棒を取り出して兄の尻にあてがった。
 俺はその様子に息を詰めた。
 尻に当てられた熱に兄が振り返ることを、頭を押さえ込んだ先輩の掌が固定したまま動かさない。先生のが終わったらこっちだぞと兄の頬に自身の先走りを塗り付けて待機していた。
「半分正解だから途中までって、そんなん俺もしんどいじゃん」
 全部挿れてイイでしょ、と教師に了解を得た先輩が兄の下肢をすぶりと突き上げた。
「ッ・――――! ……」
 ぴんと爪先まで緊張を走らせた兄が声もなく善がる。それでも咥えた物に歯を立てないのは立派なものだった。もしかしたら俺が迎えに行ったこの時既に、兄は何度か貫かれた後だったのかも知れない。
 興奮に生臭い息を弾ませ、飢えた獣のように兄の体に群がる四人の男の所為で次第に兄の姿は覗いているだけの俺の目には届かなくなってしまった。
 ただ、濡れた音と兄の甲高い甘え声、それを蔑む男の揶揄と、呻き声……悶える兄の四肢が見えないのに、そこに眼が釘付けになってしまった俺は
 精液塗れで教室の床に這い蹲った兄から、満足した男達が離れた時には下着の中で射精していた。