兄姦(7)

「開けて良い?」
 セロハンテープで止められたティッシュに手を掛けると兄が弾かれたように顔を上げた。俺の手を掴もうと伸ばした手を避けて、ティッシュを破る。
 純白のティッシュを開くと中から現れたのは黒く彩色されたグロテスクな形の、ディルドだった。
「、っ潤樹」
 兄の唇が震えている。こんなに怯えた表情の兄を見るのは初めてだ。教師に蔑まれても、先輩方に辱められても、この玩具を捻じ込まれた時でさえ兄は淫蕩な表情でそれを甘受していたというのに。
 俺は兄のその表情を目の当たりにしただけで股間が熱く滾るのを感じた。兄弟に知られたという恐怖が兄にこんな顔をさせているのだとしたら、今ほど俺がこの変態の弟であることを喜んだことはなかった。
「なァ、兄貴……コレ何よ」
 男の肉棒を模したこの玩具が、兄貴の物なのか誰の物なのかは知らない。教師が兄の合格祝いにくれた物なのかもしれなかった。
 顔を逸らした兄の頬にカリの張った先端を押しつける。
 兄が卒業後も男の身体を求めて狂わないでいられたのはこれの所為なのか。問おうにも兄は焦点の合わない瞳で床を見詰め、歯の根を小刻みに震わせているだけだ。
「俺さ、学校で兄貴がどんな勉強させられてたか知ってんだよね」
 俺は股間の勃起を隠そうともせずに兄に歩み寄り、頬に押し付けたディルドを唇に滑らせた。突き出すように力を込めると兄の唇がめくれる。もう、血の気がなくなっていた。
「兄貴ってホモの変態だったんだな、知らなかったよ」
 ビクッと兄の肩が大きく震える。呼吸を往復させることすら上手く出来ていないようだ。しきりに短い息を繰り返している。
「ケツにチンコズッポリ咥え込んでさ、女みたいに泣き喚いて……俺、見てたんだよね」
 兄の目に涙が浮かんだように見えた。そう思うと、腹の底から今まで溜めこんできた劣情が一気に噴出してくるのを感じた。
 唇を嬲ったディルドを兄の頬に打ち下ろす。兄は短く息を飲んでよろめき、俺の顔を振り仰ごうとしたがその頭を机に抑えつけて俺の勃起を腿に擦りあてた。
「潤樹……っ!」
 俺を諌めるような、悲痛な叫び声。俺を挑発しているとしか思えない。ジッパーの中に収めていることが苦しくなって、俺は兄を抑えこんだまま肉棒をパンツから引き摺り出した。
「全部知ってんだよ、ホラ、これが欲しいんだろ?」
 俺の引き摺り出した物を下着の奥から出して見せると、兄が慌てて目を逸らす。貞淑ぶった娼婦のようだ。
「良いか、兄貴はこれから俺の奴隷になるんだよ……俺に逆らったらどうなるかは判ってんだろうな?」
 抑えつけた頭を掴んで、突き付けたペニスに引き寄せる。兄は目を逸らせなくなって目蓋を閉じた。その屈辱にまみれた表情を見下ろしているだけで先走りが溢れる。俺はそれを兄の頬に塗りつけた。兄の、食いしばった奥歯が震えている。
「なァ、兄貴は頭良いんだから判るよなぁ?」
 夢にまで見た唇を亀頭でなぞるとそれがぶるぶるっと震え、俺の欲望を刺激する。
「判ったら返事だろうがよ!」
 眩暈を覚えるほど興奮した俺は片足を振り上げて兄の脇腹を蹴り上げた。
 頭を抑えられたまま蹴りを受けた兄が咽喉を鳴らして体を跳ね上げさせる。兄が抵抗する気などないのは判っていたし、兄の非力さでは抵抗など意味を為さないことも判っていたのに、俺は続けざまにもう片方の腹を蹴りつけた。
 嘔吐しそうな低い咳を零して、兄が床の上に蹲る。その肩をもう一発蹴り上げて俺は兄を仰向けにさせた。
「……返事はどうしたんだよ」
 兄の顔を見下ろして問い詰めると、痛みに歪んでいる筈の兄の表情は
 恍惚としていた。