兄姦(9)

 頭上から魂が抜き取られ、腰は骨を融かされたように急に弛緩する。その甘美な渦が俺の勃起を休ませることなく次の肉欲へと駆り立てる。
「ンく、……ん、……ぅん・ン……」
 床に糸を引きながら兄は俺の白濁を美味そうに飲み干す。
 これだけで征服したような気持ちにはなりようもなかった。口を犯しても尻を犯しても、変態調教を受けている兄にとっては自分の欲を満たしてくれるチンポの内の一つでしかない。
 兄の欲求を満たしてやるためにこんなことをしてるんじゃない。
 親や学校の求める優等生を完璧にこなすことが苦痛でもないように振舞って、肩に掛かる重圧なんて気にもしない顔して謙遜気取って結局は誰からも賞賛される、そんな兄を誇らしく思ったこともあったけど、今、俺の目の前で床に這いつくばってる淫らな獣は、その兄だ。
 兄を苦しめたい、貶めたい――そんな欲求が俺の体を覆い尽くしていくのを感じた。
 堕落させた兄をぼろぼろにして地に捨てて、兄を褒め称える親や親戚に見せ付けてやるんだ。チンポを求めて涎を垂れ流し、穴という穴にザーメンをぶっ掛けっれて悦ぶようなこの肉便所を
 想像しただけで俺は再びイキそうになって、それを見上げた兄が期待と戸惑いを綯い交ぜにした眼を向ける。
 「ほら兄貴、大事な参考書がてめぇのきたねぇ涎で汚れてんぞ」
 俺は兄貴の鬱陶しい顔を床の本の上に押さえつけた。兄の唇から零れた唾液で顔面を濡らしてやる。苦しそうに息継ぎをしながら、兄は精液の混じった自分の涎を口許や鼻先に塗される。
「よう、兄貴こんな玩具よりも先輩達に連絡した方が良かったんじゃねぇのか」
 声を掛けると兄の躰が強張る。先輩達の連絡先は容易に調べることが出来るだろう。でも、何も俺がそこまで兄のために根回ししてやることもない。
 兄は血の通った弟のセックスに溺れ、堕ちて行くが良いんだ。
「ケツが疼いて仕様がねぇんだろ」
 床に頭を擦りつけた兄の、天井を向いた尻に俺ははちきれそうなペニスをあてがった。
「……、ひッ・や、やめて……潤、」
 何の馴らしも施していない菊座に、口にすら銜えきれない凶器を突き付けられた兄は短い悲鳴を上げて身を捩った。
「ユルいこと言ってんなよ、腰が立たなくなるまで味あわせてやるからよ」
 緊張してきゅっと窄まった肉孔に、兄が逃げられないように腰を両手で抱え込んで無理矢理肉棒を突き入れた。
「、……ッ! ィ、ひ……――……ッぎ……ゥ、潤、……き・ィっ!痛……ッ!!」
 押し返されそうになる窮屈な襞を振り払うように腰を左右に揺らして乱暴に進める。
 歯を食いしばり血走った目を見開いた兄が咽喉から低い呻き声を出して、四肢を痙攣させていた。今は俺を憎む気持ちで一杯かもしれない。それでも良い。幾ら俺を憎み、恨んだところで兄は何処へも訴え出ることなど出来ないし、対外的に完璧を装うこの男が弟を疎んじる素振りなど見せることも出来る筈もないのだから。
 袋小路に追いやった兄の尻マンを犯す感触は堪らなく心地よかった。熱い肉のうねりが俺の肉棒を押し潰そうとするかのように締め付け、しかし奥底から涌き出てくる快楽の記憶を刺激されてじわり、と腸液が滲む。
 痛みに萎えた兄のチンポを扱いてやると呻き声は短く途切れるように弾んだ。
 破れた兄の肛門の皮膚から血が滴り、俺の赤黒い男根を濡らす。
「大好きなデケェチンポ突っ込まれてんだからもっと嬉しそうな顔しろよ」
 強引に突き進める肉棒を根元まで銜え込ませると、兄にもう言葉はなかった。目を白黒させ、ただ与えられる刺激を快楽だか苦痛だかの判断も出来ないまま受け止めて躰を揺さぶられている。
 時間はまだ幾らでもある。
 兄が欲望に蕩けてどろどろになるまで汚してやるだけの体力も精力も、自信はあった。