LEWD(26)

 一時間近く抑え込まれていた性欲を勢いよく発射してぐったりとなった青年を、私はベンチの奥の茂みへと引きずり込んだ。これも彼が望んだことだ。
 土が剥き出しになった場所へ彼の躰を離すと、糸の切れた人形のように加賀見はへたり込んだ。夕焼けの灯りが木々の隙間から漏れてきて眩しい。もうじき陽が落ちてしまうのだろう。
 私がスーツパンツの股間を開くと、ジッパーの音に目を覚まされたように加賀見が我に返った。まだその表情には恐怖や嫌悪の色が濃く、土の上に座った腰を浮かせてジリジリと後退しようとしている。
「大丈夫ですよ、また後で消毒してあげますから」
 加賀見が逃げ出すよりも先に腕を伸ばして、彼の肩を掴んだ。
「……だからその前にたっぷりとお礼して下さいよ、若社長」
 顔を背ける青年の上にのし掛かってコートの裾を捲る。吐き出した精液の臭いも熱気も籠もったままの股を開かれて、外気の冷たさに加賀見の躰が震えた。
「思いっきりぶち込んで欲しいんですよね?」
 しっかりと抱きとめた躰を腕の中で反転させて耳朶を咬む。加賀見の声が跳ねた。背後から腰を擦りつけると青年も自然と腰を突き出し、土の上に両手両足をついた格好になる。
「……この淫売が……何処でそんなマゾ開発をされてきたんだ?」
 双丘の谷間に私の熱くなった凶器を滑らせると犬のような格好をした加賀見が背を仰け反らせて悶えた。
「……っマゾなんかじゃ、……ねぇよ……ッ、ァ・梶谷……ッさん、スゲ、……熱ィ……」
 土の付いた青年の尻の真ん中は血が滴っているのかと思うほど赤く、まだ傷が生々しく残っていた。そこを再び乱暴に突き刺してやることを思うと猛った肉棒が益々漲ってくるのを感じる。亀頭を擦り付けられている加賀見もそれを感じているのだろう、地面に爪を立てて喉を震わせた。
「加賀見さんがマゾじゃなくて一体誰がマゾです?
 ……傷つけられて、辱められて感じるんだろう……違うか?」
 尿道口から垂れたカウパーを加賀見の傷口に塗りつけた。
「……っ……ィ……! ……ッてェ……ちが……違う、俺はマゾなんかじゃ……ねぇ、あんたがサドなだけだろ……ッ」
 地面に頬を擦り付けながら痛みに歯を食いしばっている姿を見下ろすと、愛しささえこみ上げてきて私は開ききった亀頭をいきなり加賀見の中に突き入れた。
「……ヒ、…………っ……! …………ッて…………ゥ、……ッてェ……痛ェよ……痛……ェ……梶谷……さん……ッ、」
 とうとう加賀見の眼から涙の粒が零れた。それだけ痛いのだろう。塞がりかけた無数の傷を再び熱と異物で何の潤滑剤もなく押し開くのだ。失神しないで痛みに堪えているだけでも相当の精神力が必要だろう。
「痛い? ……痛くて堪らないだろう、お前はマゾだからな。違うか?」
 ゆっくりと腰を進めた。身を竦めたように強張ってしまった肉壺を、ごついカリ首で掻き分けていく。息を詰めた加賀見が弱々しく首を左右に振った。
「自分はマゾだと言えよ、チンポで尻を裂かれてイキまくる変態だって言うんだよ」
 中程まで埋めた肉棒を引いて、再び突き入れた。上体を伏せた加賀見の躰がのたうつ。肉棒を包み込んだ襞がぎゅうっときつく窄まった。まるで性器を圧死させられそうな締め上げだ。
「―――……ッ! ……ィ、……ぎ・ッ……痛ぇ、……もう、抜いて……抜いてくれよ、……梶谷さん……梶谷さ、……っ……」
 泣き言を吐く加賀見の腰を両手で掴んで抱え直した。しゃくり上げるような苦しげな息も内蔵を押し上げられている所為で短く弾んでいた。彼が痛いと訴えれば訴えるほど、私は興奮していた。もっと泣かせたくなった。
「ほら、腰を振れ。早く抜いて欲しければ私を悦ばせるんだ」
 唇に笑みさえ浮かんだ。脈打ち熱を発する楔を根元まで突き刺せば、肉のぶつかり合う音を響かせて激しく腰を擦り合わせた。抱え上げた加賀見の腰を乱暴に揺さぶり、結合部が濡れた音をたてる頃には彼の足はもう地面についてなく、ただ私に貫かれるだけの肉人形のように四肢を痙攣させ、身をくねらせている。
「ヒ……っ・ゥ……ん、ンん……ッか……ァ・梶谷さ……ァ、あ、……ッあ、あァ……ッい……っ痛ェ……ケツ、……ケツ痛ェよ、ぉ……チンポ、……スゲ……」
 ひくひくと喉を震わせる加賀見の声が次第に蕩け、強張った尻肉は突き上げる度にキュッキュッと締まる歓喜の反応を返し始めていた。頬を上気させ、目蓋を落としている淫らな表情を晒して私が促すまま木の幹に背を預けると正面から私を咥えこみ直し、腕を私の首に回してしがみついた。
「良いぞ、ねっとりと絡みついてくる……良い、尻マンだ」
 加賀見の蕾からは再び血が滲んでいた。それが私の股間にも移って、体液と混じって、飛び散る。カリに引っ掛けられて捲れ上がった腸壁の赤さも乱れ咲いたようになり、私はそれを捏ねるように激しく抽送した。
「ヒ、……っ・いッ……イィ……ッ、梶谷さん・ッ……スゲ……ェ、痛ェ、痛ェよ……ぉっ・イク……もう、イきそう……ッ!」
 コートを纏った背を木の幹に擦らせて、私の突き上げに腰を浅ましく振りながら土と涙と涎に顔を汚した加賀見が蕩けた声で鳴く。私の首に回された手が爪を立て、灼熱のような痛みが私の性器を怒張させていた。
「この……マゾが……っ! チンポを触られてもいないのに、尻から血を流してイクのか? ……っ、変態だな」
 根元まで楔を打ち込んで加賀見の腰を回転させた。ぐちゅぐちゅと粘着質の淫音が響く。合わせた腰を更に小刻みに突き動かした。加賀見の唇はだらしなく開いたまま、その奥からは我を失った悩ましい声だけがひっきりなしに溢れるばかりで完全に恍惚の虜になっている。
 大きく腰を落とすようにしてペニスを引き抜くとそれを厭うように加賀見が尻を突き出して追ってくる。亀頭だけを残して抜き去った肉棒の上に、裂かれた肉の感触が生々しい尻を落とすと腹の奥深くまでそれを銜え込んだ青年が濁った先走りを迸らせて失神しかねないような嬌声を上げる。
「コートをびしょびしょに濡らしやがって……何だこの躰は、さっきあんなに出したばかりだって言うのにもうイキそうじゃないか、どうなんだ、えぇ?」
 加賀見を凭れさせた木が、風のない公園で一本だけ軋むように揺れていた。木の葉が落ちる。すっかり陽は暮れ、夜の底冷えが迫っていた。
「イ、……っイク、イク、イク……ッイきます……ッ! ・もう、もう出る……ッ! ン・んァ……ぁああ、ッ……チンポ……チンポで突かれて、イ・イクよ……ぃ・ヒ……――……ッ!」
 加賀見が細い喉を仰け反らせた。腹を引き攣らせて、全身に電流でも流されたかのような痙攣を起こしながらコートから飛び出た男根を弾けさせた。それと同時に今まで以上の戦慄きで吸い付いてくる肉壺に締め上げられた私自身が、腰から脳天までを愉悦の波で覆い尽くしていく。
 残滓を何度にも分けて吐き出す度に背筋を震わせている加賀見の躰を抱え直すと、私はその縁を抉るように乱暴に突き上げた。熱の冷めきらない青年の躰が突き上げに反応してしゃくり声を上げる。
「ほら、イクぞ……ッ、お前の大好きなチンポ汁を、――たっぷり、味あわせてやる」
 夜の帳を降ろして気温を下げていく外気とは反対に、私の熱は狂おしいほどに昂ぶっていった。私の、自分の欲望だけを追求するような抜き刺しにさえ加賀見は腰を振って悶える。息が上がってきた。目前に晒された首に唇を這わせると襞がざわめく。私はその肌を強く吸い上げながら下肢を大きく震わせて、果てた。