LEWD(27)

 自分のスペルマで満たした体内を、私は暫くの間ゆっくりと腰を揺らして味わっていた。加賀見からの反応は鈍く、彼がまだ夢の中にいることを指していた。時折ぴくぴくっと痙攣をして呻く。重ねた躰にはまだ灼けつくような熱が残っていたが、これを離してしまったら寒さに震え上がるのかも知れない。辺りには薄暗い街灯がついているだけだ。
「は……ッ、ぁ・ン……ぅウ……ッん、梶……っ……」
 私の名前を呼んでは躊躇って飲み込んだ青年が、しがみついていた腕の力を緩めて足を地面に降ろした。その腿に鮮血の混ざった白濁が伝い落ちる。
「さぁ、じゃあホテルまで行って消毒しましょうか」
 私が腰を引くと、加賀見の尻が一層大きく戦慄いた。一度解いた手で私のスーツを握りしめる。
「……っ、じ……自分でやる……ッ」
 震える唇で紡ぐ言葉もまだ熱の篭もった喘ぎのように聞こえた。
「まぁ、それも良いかも知れません」
 手鏡を構え、大きく開いた股間を自ら覗き込みながら消毒を行う加賀見の肢体を想像すると私は笑みを堪えきれなかった。
 抜き取った肉棒をおざなりに扱いて残滓を吐き出し、私は身なりを整えた。加賀見はというと裾や股間の辺りに濡れた後を飛び散らせたコートをしきりに掌で払っている。その様子を何気なく眺めていると、青年が不意に身震いをした。
「寒いですか」
 それはそうだ。足下から這い上ってくる寒さを直に受けているのだから、相当冷えるだろう。しかし、尋ねた加賀見の様子がおかしい。何も意地の悪い質問をしたわけでもないのに視線を伏せている。
「加賀見さん?」
 顔を覗き込もうとすると、眉を顰めて憎々しげな表情でやはり眼を逸らす。
「……どうぞ、構いませんよ」
 ぴんときた私が剥き出しの地面を指して告げると、自分の思惑を悟られた青年が息を飲み、目を丸くして私を仰いだ。
「今更恥ずかしがるようなことでもないでしょう、……それとも手を添えて差し上げましょうか」
 突然の寒気に催したのだろう、加賀見が整えたコートに私は再び手を伸ばした。耳を朱に染めた加賀見がその手を振り払う。しかし尻を犯された後で、足下も覚束ない。振り払った勢いでぐらりと躰を傾けてしまった。それを腕に抱き留める。
「……ッ、離せよ……、ッもう・良いだろ……やることやったんだし、帰る、……帰れよッ」
 尿意を堪えている表情が、恍惚の表情に似ている。腕の中で身を捩る加賀見の顔を見遣りながら私はふとそんなことを思い、股間に掌を滑らせた。びくりと大きく体が強張る。
「止め……ッ、本当、マジで……離せ……、……ッ離して、下さい……!」
 吐き捨てるかのように頼み込む言葉を口にして、加賀見は腕を振った。肘を私の胸にあてて振り解こうとしているのだろうが、あまりにも力無い。子供のような無力さだ。
 コートの中で冷えた肉棒を握って、用を足しやすいように構えてやる。加賀見が顔を伏せた。
「…………ッ、頼むよ……離してくれよ……」
 ついには鳴き声まで出始めた。痛みには強くても羞恥には抵抗が拭いきれないのだろうか、と思うと私の手の中の肉棒から暖かい液体が滴り始めた。堪えているのか、勢いがない。
「……ッふぅ……ッぅ……! 嫌だ……っ・止めてくれよ……ォ……っ」
 伏せた顔をいやいやと左右に振りながら背筋をぴくぴく震わせている。滴のようにしか出てこない小便が、彼が嗚咽する度にびゅっびゅっと勢い良く断続的に出始めた。
「嫌、だ……ッ……ゥう・ン……っ嫌だ、ァ・あ、ぁあ……っ・ぁ……」
 上体を捩り、私の胸に顔を押し付けると加賀見は小便を垂らしながら腰を前後に揺らめかせ始めた。感じているのだ。私の腕の中で排泄する恥ずかしさに、快感を覚え始めている。
「……恥ずかしい奴だ、小便して感じているのか?」
 耳朶に唇を寄せて囁いた。ヒッ、と息を飲んだ加賀見の男根が勃起の兆しを見せ始める。小便の勢いは益々弱くなった。
「最悪の上司だな……こんなマゾ、見たこと無い」
 加賀見の腿を広げさせながら囁きを続けると、扱いているわけでもないペニスがどんどんと大きくなった。泣きじゃくる声が鼻に掛かって響く。
「も……、っもう離せ……よ……ぉ、ッ……あんたが触ってる……と、出ない……ンだよっ」
 蕩けきった声で言いながら加賀見が私を払うように首を振った。確かにこれでは小便を終えるまで時間を要するだろう。
「何も弄ってるわけじゃないですよ」
 勃起しているのは私の所為じゃない、そう告げながら私は亀頭に指を滑らせた。既に二回爆ぜている加賀見の肉棒はすっかり剥けていて、開いた傘に小便とは違う液体も滲ませていた。尿道口を掠めるように撫でてやるといつも以上に過敏に竦み上がる。
「ヒぅ……ゥう・ン……ッ・嫌……だ・ァ……あ、……ッア、あっ……もう、さわ……るな……ッ」
 揺らめかせた腰を後ろに突き出して強請るように尻を振る。排泄しながら犯されたいとでも言うのだろうか。やはり潜在的に相当の被虐願望を持っていたのだろう。
「小便とザーメンが一緒に出てるんじゃないですか、加賀見さん」
 揶揄して笑うと、背筋を捩って加賀見が悶えた。本当に排泄だけでイってしまいそうだ。
「……っ、ア・……ァ、……ああ、ァん……ンんぅ……ッで、出る……、出る……ッやべェよ、本当、出る……っ! ……梶谷さ・ァん……っ・おれ、俺……イク、小便出しながらイっちゃうよ、ぉ……ッ・! ひ……っ――、い……イィ…………ッ!」
 言葉に促されたのか、甘える子供のように私に唇を求めながら加賀見が股間を迸らせた。精液とも小便ともつかないが、酷く大量に吹き出して、私の手をしとどに濡らした。