LEWD(49)

『お早う御座います、今朝も電車に乗っています。
昨日御命令を頂いた通り、今日はコックリングを付けて来ました。
御主人様は剃毛はお嫌いでしょうか……。コックリングを付ける時に、毛を噛んでしまうので
御命令で剃って頂きたいんです……。
今日は一日中射精出来ないのでしょうか。射精を禁じられていると思うとますます興奮してしまいます。
御主人様の種汁を流し込まれながらチンポを縛られたいです』
 久し振りに読むlewdからの電文――電車内での勃起は先日見せて貰ったばかりだが――をスクロールすると、見知らぬ拡張子の添付ファイルがあった。それをクリックすると、粗い画像のムービー映像が広がった。
 画面は薄暗く、狭い場所のようだ。相変わらずレンズは彼の下肢だけを向いていて、縮れた陰毛の奥に彼自身が付けたというコックリングの鋭い光が見え隠れしている。
 篭ったような低い音が幾重にも重なっている。根元を括られた肉棒をいきらせてその赤黒い先端を、肉棒と同じように見慣れたlewdの指先が貪欲にくじっていた。
「…………っ、……は、ァ」
 薄い扉一枚隔てて工場の機械音が聞こえる事務所の便所で、私は慌しくスラックスのジッパーを下ろした。昨夜あんなに吉村の肉襞を練り上げた凶器が、もう熱を放ち始めている。
 携帯電話で撮られたらしい動画はものの数分で終えてしまった。しかしlewdの動く様子を見るのは初めてのことだ。画像は粗いし音も不明瞭だが――
「、ッ……」
 私はすぐに終わってしまう映像を再生し直して今度は電話を耳に充てた。
 便所の壁に背を凭れ掛けて左手に肉棒を握る。自然と腰が動いた。
 途切れ途切れになる音声に自分の呼吸音が混じってますます聞こえ難くなっている。それでも私はまるで初めてアダルト雑誌を貪り読む少年のように息を潜めて耳を澄ませ、脈打つ欲望を根元から扱き上げた。
 電話機を耳に押し当てていると低い呻き声の混じったlewdの声が私のすぐ耳元で聞こえるようだった。ものの十数秒、彼の動画を見ることが出来たというだけで私は興奮していた。その数秒間の間だけ、見知らぬlewdと私の間に自由に行き来できる空間の穴が生じたかのように感じた。そこに私の肉棒を押し込んでやりたい。
 lewdが毎日ラフな格好で電車に乗って何処かに行っていること、コックリングと私が買わせたディルドを持っていること、彼の下肢の様子、それしか知らないことには変わりない。私はlewdからメールを貰ってから吉村で男を犯すことを知り、加賀見の身を汚し、画像だけ送ってくるlewdにこれほど欲情する必要もないのだ。生の肉の感触を知っているのだから。
 それでも、私はlewdとの距離が僅かに縮んだことに興奮していた。電話口から漏れてくる声のような物音に呼吸を合わせた。亀頭を擦り上げる。溢れ出た先走りをlewdの唇に押し付けることを想像した。背筋に痺れが走った。
 顔も知らないlewdが情欲に熟れた表情で唇を開く。私はいきり立ったものを、欲しがるlewdの咽喉奥へ容赦なく突き立てて乱暴に腰を揺すった。