LEWD(72)

「吉村とはどういう関係なんですか? ……恋人? セフレ?」
 多田は手慰みのように電話機の尻を上下に小さく揺らしながら、私の表情を見透かそうとするかのように眼を細め、意地悪く笑った。
 専務の傍らで、彼の顔を仰いでいた吉村の顔を思い出す。しかしその表情までは思い出せなかった。私の知っているような、吉村だっただろうか? 社内で見せるような控えめな笑顔を浮かべていたのか――それとも私にだけ見せるような、淫らな表情だっただろうか。
 いや、違う。吉村は私にだけそんな表情を見せていたわけではない。私の知らないところで彼は、不特定の男を咥え込んで尻を振っていたのだ。
 ぞくり、と背筋に痺れが走った。
 多田の手を弾き、携帯電話の端を掴む。多田がその刺激に笑みを歪ませた。
「君も吉村と寝たのか?」
 突き入れた携帯電話を引き、多田の顔を覗き込む。
「まっさか……あいつとはただの友達ですよ、……少なくともあいつは俺がゲイだなんて思ってへんのちゃうかなぁ」
 肉襞を纏わり付かせながら引き出された携帯電話のディスプレイが光った。端を握った私の手に震動が移る。
「ひゥ、……っ!」
 多田が背を仰け反らせ、また、丸めた。電話機が着信したのだ。此処からではディスプレイを見ることも出来ないが、私はこの機に多田の体内に再び深く、電話機を埋めた。
「ァ、あ……ッやめ、っ……梶谷さ……ぁ……っ!」
 電話機の中央にある蝶番の部分まで埋めると、手首を捻って埋めた物を回転させる。薄い本体が多田の尻肉を捏ねながら向きを変えた。
「ヒぁ・あ……ッン、ッく……ゥ……!」
 丸く口を開いた多田が私の肩に掛けた足の爪先までピンと緊張させて慄く。携帯電話の着信はまだ続いていた。一度大きく引き抜いて、間を置かずに再度奥まで犯した。
「ク・ぅ……ア……ッあ、ァあ……っ梶……、ッぃ、……イイ……っ!」
 多田の腰が躊躇もなく揺れる。私は彼の求める動きに合わせて、震動する電話機をピストンさせた。
 下肢を高く掲げた多田の腹に白く色付き始めたカウパーが糸を引いて零れる。尻穴に上向きに挿し入れた携帯電話は彼の前立腺を容赦なく掻き上げているのだろう、細長く弧を描いて硬く張り詰めたペニスが大きく脈打って悦んでいた。
「イク、……ッイク、イク……ッ! 梶谷、さ……ンん・ッ、俺……ァ、あァ……っ」
 多田が感極まって高い嬌声を上げた瞬間、電話機の着信が切れた。