LEWD(78)

 ネクタイで吉村の目蓋を塞ぐと、私は細くて頼りのない目隠しから手を放し、スーツのジャケットを脱いだ。途中、私の腕を掴んだ吉村の手をやんわりと放させると吉村は戸惑う掌を床に突いた。女性のように華奢とは言えない掌を、床の上で握る。その指先が震えているように感じたのは彼がこの先の私の行為に期待をしているからに他ならない。
 肩から落としたジャケットを吉村の頭に被せると、私はそれごと床に押し付けるようにして吉村の躰を床に転がした。
「、ッ……ぁ・梶……!」
 背中を強かに打ちつけた吉村が身を捩る。私はそのまま彼の躰に覆い被さると、涎でべとついた隆起を隠した股間を擦り付けた。衣服を脱ぎ去った吉村の腿には自身の唾液が体温を失って冷えた感触が直に伝わっている筈だ。私も、下着までしっとりと濡らされた所為で居心地が悪い。それをまた乾かすように股間の熱が上がる。
「は、……ッぁ、梶谷、さん……僕…………・良い、ですか……ジッパーを……」
 私の躰の下で吉村が掌を蠢かせ、熱に引き寄せられるように私の股間を探る。私は肯定もせず、黙って腰を僅かに引いた。
「梶谷さん、……僕――本当は、毎晩だって梶谷さんの……これが、欲しくて……」
 震える指先でゆっくりとジッパーを下ろし、私の昂りを掬い出しながら吉村は首を前に突き出した。キスをねだっているのかも知れない。しかしそれは私の首筋に埋まることもなく、私が床にジャケットの端を押し付けた所為ですぐに床に引き戻された。
「……コレ?」
 私は吉村の汗ばんだ肌を見下ろしながら低く問い返した。万が一にでも、廊下を歩く他の社員に気配を悟られてはならない。私などもうこの会社で処分することは出来なくとも、吉村の受ける損害は計り知れないだろう。
「・チンポ、……です……梶谷さんの――チンポ、だけあれば……他の男なんて要らないんです」
 吉村の掌の動きが性急になった。わざわざ性器の名前を言わされたことで喉でも渇いてきたのかも知れない。下着の上から撫でていただけの手が腰のゴムの部分をぐいと引き下げ、直に触れてくる。そのまま根本を掴むと扱きながら取り出す。
「ァ・っ……、――この、おチンポだけあれば……梶谷さん、僕、……ッ」
 吉村は体毛の薄い足を私の腰に絡みつかせながら己の股間を押し付け、私の肉棒を乱暴に上下に扱き始めた。ひとりでに呼吸を荒くし、鼻に掛かった声で私の名を何度も呼ぶ。本当に扉の外の人間を気にするならばこの唇こそ塞ぐべきかも知れないが、吉村の甘い声を閉ざしてしまう気にはなれなかった。唯一の方法を除いて。
「吉村、……お前が他の男を咥え込んで居ないという証拠を見せるんじゃなかったのか、
 誰がチンポを触って良いと言ったんだ?」
 唇に笑みを浮かべていても、今の吉村には見えないだろう。しかし吉村は私が幾ら本気で叱っていると思ったところで、言葉に幾ら不安そうな表情を浮かべたからと言っても彼が本気で竦んでしまっているわけではない。
 彼の視界を奪い、自由を拒絶して私の意に従わせることは彼も望んでいることだ。
 吉村は小さな声で謝罪し、既に反り返った彼のペニスを脈打たせながら腰を引いた。同時に、名残惜しそうに指先を這わせながらゆっくりと私のものも放す。
 私も吉村の頭を床に押し付けることを止め、反対に手前へと引き寄せた。顔の半分をジャケットで包まれ、私の操る侭になった吉村の上体は仰向けの状態から横倒しになり、吉村はまた小さく呻いた。しかしその足の間からは先走りの透明な汁が滴っている。
「さぁ、――見せてもらおうか?」
 低く抑えた声は室内に響きこそしないものの吉村の耳には充分通る声として聞こえたのか、大袈裟なほどびくりと肩が揺れた。
「はい、……梶谷さん」
 歯の根があっていないような、だらしない唇から舌を時折覗かせながら吉村は従順に答え
 横倒しになった躰をうつ伏せにすると下肢を雌猫のように上げた。