LEWD（9）

　私が吉村の躰の下に上体を潜り込ませると、吉村は腰を浮かせながら私の顔を見遣った。不安そうな、しかしそれ以上に期待を含んだ眼差しだ。
　視線に晒されただけで先走りを溢れさせ自らの腹を打つほどに反り返った吉村の淫棒を、掴んだ掌で唇に導く。先端を下唇でそっと掠めただけで、吉村は内股をぶるぶるっと震わせて私自身から口を離してしまった。
「吉村、……きちんと銜えていないと、いけないよ」
　亀頭にわざと息が掛かるように間近に寄せた口で告げた。私の顔を下に入れている足が、今にも崩れ落ちそうなくらい震えていた。私の口に腰を押しつけてこないのは彼の恥じらいなのか。
「梶谷さん、……ン、……梶谷さ・ん……」
　うわごとのように私の名前を呼びながら吉村は言い付けられた通り私のものを銜え直す。はち切れそうな幹に横からしゃぶりつき、れろれろといやらしく舌を使った。さっき口付けをしたのが良かったのか、吉村の唾液は後から後から溢れ出てくるようだった。それがねっとりと私の肉棒に絡みついて、具合が良い。
　私は吉村の口腔を求めるようにぐっと腰を突き出した。吉村もそれを喜んで銜えこむ。喉の奥まで吸引することは無理なようだが、口内の粘膜でしきりに私のものを味わおうとしている。
　私は吉村の口を肉棒で封じながら、彼の腰を引き寄せた。初めて見る、部下の陰部をたっぷりと眺めた後でそれを口に含む。体内の熱を感じた吉村が一旦躰を強ばらせ、震えた。
　目一杯頬張るようにして自分の口にねじ込もうとすれば、何とか吉村のものは私の口内に収まった。窮屈な中で舌を蠢かせ、先走りを強く吸い出そうとすると吉村は耐えきれないのか、また顔を上げてしまう。
「やぁ、ッ駄目、イっちゃいます……っ、ア・だッ……駄目です、梶谷さ……ァ、あ・ン……ッ！」
　吉村は私の股間に顔を伏せたまま開きっぱなしの唇で口淫も出来ないほどに嬌声を上げ、涎を垂れ流した。駄目だと言いながらも貪欲に腰を振っている。私は鼻先をくしゃくしゃと邪魔する陰毛を掻き分けるようにしながら吉村の性器を貪った。吉村の声はどんどん甲高くなって、今にも達してしまいそうだ。
「ぃ、いく……っ、イッちゃいます、梶谷さん、僕、……あ、もう……っ！」
　びくっびくっと四肢を引き攣らせて吉村が鳴き声を上げる。私の口内にも精液と殆ど変わらない臭いがたち篭めてきた、先走りの粘度が高くなってきたのだろう。私は、もはや言葉さえも紡げなくなった吉村から唇を離した。
「あ、……？　梶谷……さ、ァ……」
　急に熱っぽい愛撫を失った肉棒が切なげに震えている。吉村が首を捻って私の顔を見遣った。
「か、梶谷さ、……ゃ、……嫌です、止めちゃ嫌です……っ、お願いです」
　股間をべっとりと濡らした吉村の股間を丁寧に撫で上げる。触れるたびに吉村の性器は弾け飛びそうになっていた。ぱんぱんに膨れ上がり、浮き上がった太い脈がグロテスクなほどだ。
「ごめんなさい、あの、僕ばっかり……でも、お願いです、何でもしますから……っイ、いきたいんです……梶谷さん、……」
　意地悪をするつもりはなかったのだが吉村はよほど辛いと見えて涙の粒を滴らせながら哀願した。酷くするつもりはなかったのだが、泣いて縋られると、乱暴に扱いたくなった。
「かじた、ァ・――ゥん、……む……！」
　腕を伸ばして、疎かになっている吉村の唇に私の屹立を突き立てる。喉奥を抉じ開けるように乱暴に腰を揺すると、吉村はくぐもった声で呻きながら背中を波打たせてえづいた。その、内蔵から逆流しようという躰の生理的な刺激を亀頭の先に感じると私は脳天まで痺れが走ったように感じた。
　苦しさの所為で吉村の肉棒が若干萎えてしまった。それを舌先であやしながら、唾液とカウパー液で濡れた股間から掌を背後へと滑らせる。吉村は抵抗するかのように声を上げたが口一杯にペニスを食んでいては何を言っているか聞き取れない。私は吉村の肉棒を先ほどと同じようにしゃぶってやりながら、強張った筋肉を宥めるようにして蕾に指を這わせた。
　まるで性器を犯しているかのように腰を振る私の動きにあわせて吉村も口腔を犯されることに慣れてきたようだ。或いは諦観かも知れないが。吉村の口端からは糸を引く唾液を溢れさせ、ずちゅずちゅと低い水音を響かせている。鼻孔からしか息の継げない吉村は荒い呼吸を繰り返していたがそれには甘い声も大分混じってきた。それどころか私に腰に腕を回して自分の顔に引き寄せるようにして肉棒を吸っている。
　私が時間を掛けてゆっくりゆっくりと入り口を濡らした尻穴も、肉棒の脈打ちと連動するように物欲しそうにヒクついた。
「んン、ぅ……ふ・……っンふぅ……ッ！　……ぅん、む……ん……」
　吉村自身から唇を離すのと同時に指を侵入させると、吉村は一度きゅうっと喉を窄ませたがすぐに甘い吐息を吐くようになった。私は吉村の香りが濃い唾を飲み込んで喉を潤し、躰を伸ばした。吉村の腿から頭を覗かせて、期待に打ち震えている尻たぶに鼻先を埋める。息を大きく吸い込むと、むっとするような淫靡な体臭が鼻を突いた。吉村が犬のように甲高く鼻を鳴らす。全身を揺さぶって、もっと深い快楽を求めているようだ。
　私は乱暴に吉村の尻を割った。赤く色付いた蕾が露わになる。お座成りに舌先で突っついてから、無理矢理ねじ込もうとする。無意識に逃げようとする腰を押さえ、舌を細く硬く窄めて挿入させた。舌はぬるぬると滑ってすぐに吐き出されてしまうが、何度もそうしているうちに吉村は心も尻穴もすっかり蕩けてきたようだ。
「よし、……吉村、もう良いぞ」
　私は傘を広げて穴も開ききった肉棒を吉村の唇から半ば無理矢理引き抜いて、体勢を戻した。
「…………ぁ、梶谷、……っさん……？」
　高熱に浮かされた子供のように短く息を弾ませ、顔を真っ赤にさせた不安そうな表情が私を振り返る。唇の周りはもうどろどろだ。
「そのまま四つん這いになっていろ」
　私は吉村の背後に立って吉村の腰を抱え上げ、支えた。唾液で解した尻の谷間に二、三度ペニスを擦り付ける。それだけで吉村は躰を小刻みに震わせて感じたし、私も堪え切れなくなって精液を迸らせた。
「ぁ、……ッ熱い……、熱いです、梶谷さん、梶谷さんの……！　は、ァ、僕、……嬉しいです」
　背後からザーメンをぶっかけられた吉村は恍惚とした表情で躰を仰け反らせて熱い息を弾ませた。私の吐き出した白濁は吉村の背にも尻にも飛び散って、妖しい光を反射している。
　嬉しいだと？
　私はぶちまけた体液を掌で伸ばし、吉村のアナルに丁寧に塗り込みながら中指を挿入した。さっきよりも容易に深く入り込み、吉村は腹筋を震わせて背を丸める。まだ硬さを保ったままの肉棒を、指を銜え込んだ穴に押し付ける。
「梶谷さん、僕、……ッ大丈夫ですから……はや、く……僕、欲しいです、ッ……梶谷さんの……！」
　怯えを隠しきれないように尻を震わせながら、吉村は性交する犬と同じように腰を突き上げた。体内に埋めた指をぐるりと回してやると短い悲鳴を上げて喘ぐ。私は堪らなくなって指を引き抜いた。
「吉村、…………いくぞ、入れるからな」
　吉村の腰を掴んで肉棒を突き立てる。強張って締め付けられた菊座を、無理矢理抉じ開けるようにして強引に腰を進めた。さすがに吉村も息を詰め、歯を食いしばって耐えているようだ。広がったカリ首を銜え込むまでは時間が掛かったが、一度嵌めてしまえば傘が引っ掛かって容易には抜けそうになかった。
「……大丈夫か？」
　しかし直ぐには動くわけにもいかず、私は吉村の蠢く体内に肉棒を突き入れたまま暫く吉村の肩を抱いてじっとしていた。吉村の額に脂汗が浮いている。何度も絶頂の手前まで上り詰めた性器も再び萎えてしまった。私はそれに手を添えて扱いてやりながら、背中に唇を這わせて吉村が異物に慣れるのを待った。
　この躰に男を受け入れるのは初めてなのだろう。では、何故こんなことを許したんだ？　lewdではないのに。lewdだと思えばこそ私は無理矢理、強姦と訴えられても仕方がないくらいに乱暴な方法でことに及んだが、吉村がlewdではないなら何故私のこんな行為に従っているのだ。こんなに苦しい思いまでして？
「梶谷さ、……梶谷さん、……っァ、は……」
　背後からじっとしていた私を肩越しに振り向いて、吉村が私の顔色を伺うような眼をした。その目元に唇を付ける。嬉しそうに吉村は鼻を鳴らした。いつしか自ら腰を揺らめかせている。締め付けにも躊躇いを感じるような、強弱のついた淫らなヒクつきに変わっていた。
「イイのか？　……吉村」
　一度大きく腰を引いて、ゆっくり根本まで突き入れる。返事をするよりも吉村は顎を上げて歓喜に震えた。扱いてやっていた肉棒もしとどに濡れている。
「吉村、イイのか、って訊いてるんだよ」
　根本まで嵌めた楔をごりごりと突き動かした。吉村の爪が床を弱々しく掻く。
「ペニスを尻に嵌めて貰って気持ち良いのか？」
　吉村のイイところはすぐに判った。前立腺をなぞればどんな風に泣き、内臓を押し上げるほど深く刺せばどれだけ身悶えるか、――吉村がどれほどまでに敏感で淫乱なのかは容易に判った。
「ヒ、……っぎ・いィ、……良いッ……です……梶谷さんのチンポ嵌めて貰って嬉しいです、……ンは、ァ・――……ッ！　良い、イイです……！」
　私は吉村の下肢を抱え上げ、中腰になってがむしゃらに突いた。繋がった陰部から、激しく情欲が湧き上がってくる。達したばかりの肉幹は吉村の肉襞の中で青黒い脈をはちきれそうなほどに浮き上がらせて復活していたし、浅ましく腰を振る吉村の中に存分に先走りを振り撒き、塗り付け、柔肉を捏ねた。
　吉村の男根もまた、私に体を揺さぶられるたびに自身の腹を打ちながら白く濁り始めたものを垂れ流していた。
　私は昨夜の妄想を思い出していた。これはその夢の続きなのかとさえ思った。四つん這いにさせた男を背後から荒々しく突き刺し、腹の中から突き破ってやろうとするかの如く、激しく穿つ――……
「イ……ッ！　ァ、は……ッあ・ァあ――……！　死ぬ、死んじゃいます・ッうァ、あ、ッあ…………梶谷さん、僕、僕……っう、ン、んン……っ、イイ、い、……ぃイ……っ！」
　吉村の尻穴が捲れ上がって赤く花が咲いたようになっている。その中央に私の猛々しい凶器を咥え込んで嬉しそうに涎を垂れ流し、水音を響かせる。柔らかく締め上げてくるこの肉の感触は夢ではない。吉村が嬌声を上げるたびに私の過敏な幹に吸い付いてくる肉壁のざわめき。
　吉村は細切れのよがり声を上げて尻を犯される快感に射精した。私はまだ余裕がある。たとえ今、もう一度吉村の中で果てても今夜は何度だって出来る気がしていた。私の妻は知らなかっただろうが、私はセックスに強いという自負があった。吉村の体がどろどろに融けてしまうまで淫棒で汚し、ザーメンで溺れるくらい犯してやろうと思った。吉村はそれを求めるだろうし、私も長いこと愛する誰かをそうしたいと思い続けていたように思う。