夏合宿(3)

「先輩、……」
 トランクスの上から鼻先を押し付けた。この下に、先輩のものがあるんだ。一度押し付けてしまうと、歯止めが利かなくなった。鼻の頭や唇で扱くように何度も擦りつける。差しこんだ手をサポーターの裾に掛けて捲ろうとした。
「……!」
 顔を押し付けた先輩のチンポが勃起を始めている。顔を起こして再度先輩の顔を見た。やっぱり安らかに寝息を立てている。
 俺は何かに急かされるように先輩のトランクスを腰から下に摺り下ろした。サポーターが膨らんでいる。何度も唾を飲みこもうと試みたけど、すっかり口内は乾いてしまって何も飲み下せない。
 先輩の様子を見ながらゆっくりと、サポーターに手を掛ける。大きく引き下げるまでもなく、直ぐに先輩の亀頭が姿を見せた。殆ど完全に勃起していた。
 中村の言葉が蘇った。疲れマラっていう、アレだ。
 先輩の息に乱れはなかった。相変わらず深い呼吸を繰り返している。
 腿に手を置いて、ゆっくりと少しずつ足を開かせた。股間に顔を近付ける。まだやっぱり少し怖くて、横目に先輩の顔を見遣ったけど大丈夫そうだ。
 大丈夫だと思うと、頭を覗かせた先輩のものにむしゃぶりつくように唇を這わせた。つんとするような匂いが鼻をつく。それが俺のことを更に盲目とさせた。
 先輩に彼女がいるという話は聞いたことがない。今まではどうだったか知らないけど。こうやって誰かにしゃぶらせたことはあるんだろうか。
 亀頭を口の中に含むと、サポーターを一気に摺り下げた。もう、ゆっくりと、なんて気にしている余裕はなかった。サポーターに押し込められていたものが俺の口の中に飛び出すように姿を現す。
 陰茎に纏わり付いた味を、先ずは全部味わいたかった。いきなり咽喉の奥までチンポを啜り込む。舌がぴりぴりするほどしょっぱいのは汗の所為なのか、それとも恥垢が溜まってるんだろうか。
 一方の手で先輩の玉を撫でながら、もう一方を自分のパンツの中に入れた。まだ触れてもいなかったのに熱を持って硬く勃ち上がっている。
 根元まで吸ったペニスを唇で扱きながら引き抜く。汗を舐め取った先輩のものが、今度は俺の唾液に濡れててかてかと光っていた。
 亀頭を唇で何度も食んだ。舌先を窄めて尿道口を擽る。直ぐに先輩の欲望は跳ねるように震えて、反応を返してくれた。
 これが先輩の「気持ち」じゃない事は判っている。ただの、刺激に対する反応なんだ。それでも俺は夢中になって、先端にしゃぶりついた唇を裏筋に這わせて舐め下ろし、玉袋を吸いたてた。
「……ッふ、んっ」
 先輩の、うわ言のような声が洩れる。さぁっと血の気が引いて顔を離そうとした。
 幾ら先輩に近付きたいと思っているだけなのが建前に過ぎなくても、こんなことばれたらボクシング部を辞めるどころじゃ済まない。先輩を顔を合わせ辛くなるどころの騒ぎじゃない。
 自分のパンツに入れた手の中の肉棒も縮こまってしまっている。まだ間に合うなら、逃げるなら今だ。
 そこまで思った時、顔を引いた俺の頭を先輩の手が抱え込んだ。
「……?!」
 先輩の腿が大きく開いてベンチから片方零れる。目前に突き付けられたペニスが透明な液をぷっくりと滲ませて震えている。
 上目で先輩の顔を覗いた。まだ先輩の目蓋は閉じていて、眠っているかのように見える。
 雫を溢れさせた鈴口に舌を伸ばし、カウパーを掬い舐めた。びくん、と先輩の肩が震えて舐め取った先から次の雫が溢れてきた。
 舌でそれを擦りつけるようにして、亀頭を舐めまわす。一度下ろした手を幹に掛けて指の腹で筋を扱いた。
「ん、んんッ、……ん・」
 先輩の腰が揺れた。俺の頭に押し付けるように、体が横向きにずれる。先端を口に含んで、雁首に舌を絡ませた。自分で握った勃起が再び硬直して熱を取り戻している。先輩のものを扱く動きに合わせて手を上下させる。鼻腔から洩れる息を隠す必要もなくなった。
「ふぁ、ッ……あ、ぁあ……」
 頬を窄めてチンポを吸引すると、先輩は相変わらず目を閉じたままだけど口を丸く開けて声を上げた。そのまま顔を前後すると応じるように腰が揺らめく。ベンチの足が床を鳴らした。
 咽喉の狭い場所に敏感な部分を擦りつけてあげながら、先輩の玉を揉み扱いていた手を腰に滑らせる。先輩の足が俺の肩に掛かって、恥ずかしげもなく腰を突き出してきた。
 開かれた双丘に掌を回すと、引き締まった尻たぶが怯えるように震えた。逃げることは、もう許せない。根元まで咥えたチンポをちゅぱちゅぱと音を発てさせて吸うと、口内には一気に粘り気が帯びてきた。
 指を進め、蕾に押し当てる。
「、っあ駄目ッ……だめ……」
 漸く先輩の唇から言葉らしい言葉が洩れるが、そこはしっかりとひくついていた。
 周囲の皺を丁寧に引き伸ばすように弄る。揺らぐ腰の動きも、ディープスロートを悦んでいるのか指の侵入を拒もうとしているのか、それとも促そうとしているのか、もはや判らない。
 先輩の縋り付くような手を無視して顔を引くとチンポから口を離し、袋に吸いつく。もう既にパンパンに張っていて、舌の腹で押すように揉むと亀頭が汁を垂らして、俺の首を濡らす。
 そのまま足の間に頭を潜らせると、指を宛がった孔へ舌先を伸ばす。
「ァ、あ・っ駄目……瀧沢、駄目……ッん」
 俺の名前を読んだ。俺がしていると知っているんだ。俺は自分の怒張から手を離して先輩の腰を掴んだ。ベンチの上に伏臥させる。駄目だと繰り返す割には先輩は、俺が体を反転させただけで腰を突き上げた。経験があるのかも知れない。相手は誰だ?
 昼間のスパーが頭を過った。岩崎先輩だろうか。そう思うと、猛烈な嫉妬心か俺の胸を掻き毟った。
「ひ、ィ……っやぁ・痛い……っ瀧沢、やだ、」
 舌を菊座に這わせながら、強引に指を捻じ込む。案の定先輩は身を硬くして蕾を狭めたが、突き立てた指をぐりぐりと押し込んで襞を掻いた。
 先輩が細い腰を捩って苦痛から逃れようと擦る。腹の下で振れた肉棒が涎を零して糸を引く。指を一度引くと、もう一度突き刺す。
「……っ・!」
 短い、息を飲むような悲鳴を上げて先輩は上体を反らした。
「誰が」
 意識せずに飛び出た声は自分でも驚くほど低かった。首を捻って、先輩が呼吸を途切れさせながら俺の顔を振り返る。
 「誰が先輩の躰を開発したんです?」
 体内に埋めた指を緩く曲げた。先輩の腰が跳ね上がって、じわりと襞に汗が滲んだようだ。感じ始めている。浅ましい躰だ。
「知らない、……っそんなの、」
 指を曲げたまま手を引いた。先輩の上擦った声が洩れる。指の本数を増やしてまた突き入れる。
「やあぁ、っ……や、……いや、瀧沢……ッ」
 いやいやをするように首を振るのに反して、ベンチを濡らす汁の量は増えているようだ。もう触っていないのに、一人でびくびくと腹を打っている。
「岩崎先輩でしょう?」
 二本の指を咥えこんだ蕾がぎゅっと締まる。肯定なのか。
 岩崎先輩には許せても、俺には許せないってことは鷲見先輩は岩崎先輩のものということなのか?